2015年3月29日(日曜日)
【青森県】 三沢市
あったかい。
もう寝るときにダウンジャケットを着て寝袋に入らないでも大丈夫だ。
あっかいんだからぁ~、ってこの2日で100回くらい聞いたな。
ちょっと待ってちょっと待っておにいさん、は150回くらい。
そういうの好きな人には申し訳ないけど、言ってるの見るとムズムズします。
日本中で流行ってるなぁ。

あっかいんだからぁ~
あ、昨日知り合ったカメラマンのキヨシさんが撮ってくださった僕の写真。
こんなやつ!!



んー、カッコいい。
キヨシさん、ありがとうございます!!

ちょっと待ってちょっと待ってお兄さんー。

呼ばれたからナデナデしました。
歯医者さんの予約を月曜日に入れたので、明日まで三沢から動けない。
日中は本当に何もすることのない三沢。
自衛隊とアメリカ軍基地があるだけあって、結構辺鄙なところなので、どこに行くにも車がないときつい。
何しようかなぁと思いながら散歩した。


三沢は町の規模に対して飲み屋街がとても大きい。
米軍基地や自衛隊の恩恵って部分が大きいんだと思う。
そして地元の人たちの言葉も、青森だというのに方言が薄くてとても聞き取りやすいのは、自衛隊関係で県外からの人が多いため、自然と標準語になっていったんだろう。
若者の中にはこの辺りの南部弁が全然喋れない人も少なくないという。
マクドナルドの中は半分くらいアメリカ人だし、道路を走る車で爆音でラップミュージックをかけているのは必ず黒人さんだ。
地元の人に話を聞くと、三沢の兵隊さんはとても行儀が良いという。
空軍の兵隊さんはある程度エリートで統制がとれた人が多いとのこと。
それに比べて沖縄のような海軍の兵隊さんは荒くれ者が多いので、従って喧嘩沙汰や色んな事件も起きるんだそうだ。
ゆうべ地元のおじさんが言っていたが、三沢に米軍がやってきたのは、昭和23年。
八戸に上陸して、三沢にあった飛行場を摂取しに来てそのまま定着したんだそう。
つまり70年近くかけてここにはアメリカ文化が根付いていったということになる。


現在のおじさんたちが子供の頃にはまだ米軍さんたち一言で言っても、白人地域と黒人地域がズバッと分かれていたそう。
もちろん、白人も黒人もみな優しく、子供の頃に隣に住んでいた米軍さんがアメリカの食べ物をおすそ分けしに来てくれたりしてたみたい。
スニッカーズなんてお菓子も、今でこそコンビニとかでも買えるが、当時はまだ三沢くらいにしか出回っていなかったという。
夜に歌っていて印象的だったのは、日本の自衛隊の人と米軍の若者たちがみんなで一緒に飲みに行ってる様子だった。
お互いに下手な英語を喋ったり、下手な日本語を喋って楽しそうに飲み歩いていた。
米軍基地を、あいつらは侵略者ですからね!?クソ野郎どもですからね!?断固根絶すべしいいいい!!!っていう熱烈な自衛隊の人もいるけど、やっぱり個人レベルでこうして楽しく遊べる様子は見ていて気持ちがいい。
70年だもんな。
もはや完全に隣人だよ。
しかしまだ三沢の飲み屋街にはアメリカ人お断りのお店がほとんどらしいが。


ささやかなアメリカ文化の商店街を歩き、図書館で日記を書いて本を読み、それからも町を散策しているとすぐに夕方になってしまった。
こうして遠い町を歩いていると、ふと飲みに行きたくなってくる。
路地裏にある居酒屋にふらっと立ち寄って地元の人とお喋りしながら、その町の当たり前の顔をのぞく。
外国でもなるべく観光客向けでない、路地裏の小さなバーやレストランに行っていたし、そういうところで地元の人たちに混ざってお酒を飲んでいると必ずといっていいほどコミュニケーションが生まれて、よっしゃ次の店行くぞ!みたいな思いがけない展開になったりする。
それこそが旅の醍醐味。


なるべくローカルなところ。
なるべく地元の人たちが利用するところ。
そして、ちょっと気になるのが、歩いていてよく目にする「バラ焼き」という文字。
調べてみると、どうやらこの三沢発祥の地元グルメみたい。
しかし最近のB級グルメみたいな町をあげた名物といった様子ではなく、あくまで普通の地元の人たちのメニューといった雰囲気。
よし、今日はこれにしようと、これ以上ないくらいローカルな食堂のドアを開けてみた。


おお………こいつはなかなかのクオリティだぞ。
高倉健が飯食ってそうなお店だ。
「あらー、いらっしゃいー。どこから来でるんですかー?三沢にはお仕事ですが?」

優しそうなおばちゃんが1人でやってるこのお店。
お喋り好きなんだけど、距離の取り方が絶妙で、ああ、こういうお店に来たかったんだよと嬉しくなりながら席についた。
注文したのはもちろんバラ焼き。
それと瓶ビール。

この年季の入った鉄板でおばちゃんが焼いてくれるのは、甘辛く味付けした玉ねぎと牛肉。
これがもうたまらん!!
いたってシンプルな大衆料理なんだけど、ビールにめちゃくちゃ合う!!
いや、これは瓶ビールでないとダメ!!
ジョッキの生ではなく瓶ビールの味!!
うごおおおお、美味い!!!
「お店は結構古いんですか?」
「そうだねぇ、もう50年になりますねー。」
「へー!!バラ焼きっていつから名物なんですか?」
「いやー、それごそ開店した時くらいからがなぁ。」
おばちゃんが子供の頃はまだ物資もあまりなく、豚肉すら贅沢な食べ物で、鳥肉くらいしか食べられなかったそう。
それが米軍さんのおかげで牛肉が出回ってこうした名物が生まれたんでねぇがい?ということだ。
しかし最近のB級グルメ旋風で、お隣の十和田市の名物として売り出されて、今では十和田のグルメとして認知されてしまってるとのこと。
そんなことお構いなく、おばちゃんは慣れた手つきでバラ焼きを焼いている。
あまりに美味しくて、そしてお店の雰囲気に和んで、もうひとつの名物、ホルモン焼きと瓶ビールおかわり。

「ホラー、今がら羽生が滑るよー。」
テレビではフィギュアスケートのエキシビジョンをやっていた。
おばちゃんと、お爺ちゃんもやってきて、日曜の夜、3人で一緒にフィギュアを見た。
お店の真ん中にあるストーブがとても暖かかった。
「あらー、歌うたってるのがい?だったらサインもらわないとー。」
「いえいえ、もっと有名になった時に書かせてもらいます。」
ほろ酔いでお店を出て歩いた。
飲み屋街は週末の賑わいも終わって静まり返っている。
風もなく、のんびりと夜道を歩いた。
何もない日だったけど、すごく心が温まった。
とてもいい1日になった。
いやー、あったかいんだか………
あ、危ない危ない。
さ、明日歯医者行ったら出発するか。