2015年3月23日(月曜日)
【宮城県】 大崎市 ~ 【岩手県】 北上市
目がさめると、公園のあずま屋の下。

ベンチが横にあるのだが、幅が肩幅よりも細いベンチだったので、転げ落ちそうなので仕方なく地面にマットを敷いた。
地面に直接横になるとどうしても寝袋がマットからはみ出して汚れてしまわないか気になるが、ちょっとしたコツとして、他の荷物で両サイドを挟んでしまうとある程度寝返りをうってもはみ出るのを防御してくれる。
これ間違いない。

ゆうべヒデ君に石巻から大崎市まで送ってもらった。
本当は海岸線を北上していくつもりだったのだが、みんなに止められてしまったからだ。
沿岸部はほとんど壊滅して人もほとんどいなくなった。通る車といえば工事車両くらい。
気仙沼や陸前高田などの現状を見ながら上がっていこうと思っていたけど、そんな状態では青森に着くまで何日かかるかわからない。
というわけでおとなしく内陸に戻り、東北を縦に割る国道4号線で青森を目指すことにした。

春になれば桜が咲き乱れるであろう羽黒山公園を後にし、歩き始めた。
今頃宮崎では花見が始まってるはず………
平和台公園や仏舎利の塔で、賑やかに酒を飲んでるだろうな…………

そんなことを思いながら歩く体に寒風がびゅうびゅうと吹きつけてくる。
なかなかいいヒッチハイクポイントが見つけられず、いつまでも歩いていると肩が抜けそうに痛んでくる。
こりゃ東北はまだまだ桜はおあずけだなぁとコートの襟に顔を埋めていると、その寒風の中に白いものが混じり始めた。
最初は風花かな、と思ったが、次第に粒は大きくなっていき、ヒッチハイク場所を見つけて荷物を置いたころには完全な吹雪状態に。

写真じゃわからないけど、この時横殴りで雪が逆巻いている。
風のあまりの冷たさに顔がひび割れそうになり、立てる親指も感覚がなくなってくるので、拳の中に握り込んで、ただグーを道路に差し出している状態。
ぬおおおああおお!!!!!もうダメだあああああああああ!!!!!!
止まってくれえええええええええ!!!!!!!
あああああああああ!!!!!!
止まった!!止まったぁ!!
「すぐそこまでだけど、どんぞぉー。」
優しそうな地元のお母さんと娘さん。
お母さんが、今日は寒いですねぇ、宮崎からだとこたえるでしょー、といった世間話を喋ってくれるんだけど、高校低学年くらいの、AKBみたいな姫カットをした娘さんは無言。
そりゃそうだ、こんなの怖くてたまらんよな。
これが普通の反応だと思う。
いきなり、
「イエーイ!最高じゃん!俺ケータ!君は?マジ出会ってクールっていうか今日はドライバーズハイで攻めまくりトリスだぜ?この出会いマジ神に感謝アッラーホエクペル!!」
とかテンション高い人いるけど、ああいうの面白いよなぁ。
人間色んなのいて楽しいなぁ。
壁のある人間、ない人間、そんなのどうでもいい。
思いやりがあることが大事だよな。
ほんの5キロくらい走ったところにあるパーキングエリアで降ろしてもらい、お礼を言って見送った。
車を降りるときに、ほんの少しこちらを向いて、でも視線はずらしたまま会釈をしてくれた娘さん。
そういうのが可愛い!!
パーキングエリアの食堂でトラックの運ちゃんたちに混じって定食を食べ、また雪がびゅうびゅう吹きつける中、ヒッチ再開。
ぬぐおおおお………ぎぎぎぎ…………
か、風が痛い……………
止まって………く………れ…………
止まった!!!!!
「じゃあ一関まで行きましょうかー。」
乗せてくれたのは介護福祉士のお兄さん。36歳。
色んな仕事を転々として、地元に帰ってきたところだという。
趣味はパチンコ。
最近ではケータイのオンラインゲームにハマっているらしい。
今も仕事が終わったところでパチンコ行こうかなーっていうところで俺を見つけて乗せてくれたみたい。
「まぁー、一関にもパチンコ屋さんはあるがらねー。」
パチンコでだいたい月に4~5万円はプラスを出せるというお兄さん。
そしてそのお金をオンラインゲームの課金につぎ込んでいるという。
足りない時は給料を削って課金するらしい。
パチンコ、オンラインゲーム、一体何を生み出すというのか。
まったく生み出さない。
でもそれが楽しくて楽しくて生きがいみたいな人が、この日本にはたーーーーーーくさんいる。
休日にパチンコ行って、仕事の休憩時間にずっとケータイでゲームしてそれで、あー、毎日退屈だなぁ、っていいながら、若者に夢ばっか見てねぇで現実見ろや、と言う。
頭わいてんじゃねぇのかボケが、とずっと思ってきたけど、でもそういう人がこの世の中のかなりの割合を占めてるんだもんな。
俺だって旅なんて誰の得にもならんことをやってる。
興味のない人からしたら、ただのみじめな世捨て人。
お互いをけなし合うことは無限にできる。
お互い、違うことをやってるんだから。
でも違う考えのもとに、違うことをやってる人をけなすって、つまんないよなって思えるようにもなってきている。
全然まだまだだけど。
結局、一関を通り過ぎ、水沢を過ぎ、北上市まで乗せて行ってくれたお兄さん。
しかもコンビニでオニギリとから揚げまで買って夜食にしなーと渡してくれた。
お兄さん、パチンコ勝てるといいですね。
楽しい演出見て、大当たり。
俺も旅のイカした演出からの大当たりを楽しみます。


てかやべぇ。
うっすら積もりはじめやがった。
早いとこ寝床を見つけようと、地図を見て目星をつけて大きな橋の下にやってきた。
周辺が公園になっていて、橋の下でも綺麗な芝生になっている。
よし、ここにしようと、荷物を下ろす。
こんな小雪の降る寒い夜に人は出歩かないだろうと、荷物はここに置いたままで歩いてラーメン屋さんを探した。


飲み屋が多いことで有名な北上市。
しかし月曜日の雪の夜に歩いてる人なんて皆無で、とても歌える状況ではない。
風情があっていいネオン街だが、今日は大人しく飯食って帰ることに。
というわけで「みちのく」っていうどこにでもあるラーメン屋さんで、ミソラーメンとさっきもらったオニギリを食べた。
平然と食べ物を持ち込みしている俺に、店員のおばちゃんが、美味しそうね、とニコニコして言ってくれた。
ああ、おばちゃんの笑顔も見て、ミソラーメン食べて、あったまったなぁとお店を出た。

ただの吹雪。
なにこれ?バカですか?
一瞬で超冷たくなって、急いで橋の下に向かった。
たったの1時間て道が見えなくなりはじめてやがる。
ムートンの靴が濡れて、中のモコモコがぐじょぐじょになってしまった。
体に雪が降り積もって雪だるまみたいになりながら大急ぎで夜の道を歩いた。

やっとのことで橋の姿が見えてきた。
暗い雪の中でぼんやりと浮かんでいる。
足を雪でべちゃべちゃにしながら橋の下に入った。

吹き込みすぎ(´Д` )
橋の下の意味ねぇ。
バタバタと叩いて雪を振り払うが、風が強すぎてモサモサと雪が降りかかってくる。
ぬぐおおお……………
さ、さみい!!
真っ暗な橋の下でiPhoneの明かりを手に、荷物を運んだ。
橋脚のギリギリの隙間に入り込むと、なんとかここまでは吹き込んでこなくなった。
風が強すぎて急いで寝袋を出し、バッグを横に置いて風除けにして潜り込んだ。

明日の朝が恐ろしいな…………
寝袋の口から風が漏れ込んでくるので、手でつかんで目を閉じた。
さすがに………寒いな。