2015年2月13日(金曜日)
【愛媛県】 宇和島市 ~ 【広島県】 尾道市
寝ているとき、すぐ横を人が歩く音がしてすごい勢いで飛び起きた。
寝袋から体を出して周りを見渡すと犬の散歩をしている人が向こうを歩いていくところだった。
どさりと体を倒してまた寝袋にくるまった。
ここは南米じゃない。誰も俺を襲おうとする人なんかいないんだという安心感ですぐに眠りに落ちる。
平和だ。
きさいや広場という道の駅みたいなところで寝たんだけど、朝になって職員たちが出勤してきても、誰も俺を起こす人はいない。
警備員さんにあっち行けと言われもしない。
寝ていた建物の横は食堂だったらしく、すでに数人の人が朝ごはんを食べていた。
寝袋をまとめ、荷物を担いだ。
今日の目的地は尾道。
愛媛からならば瀬戸内海にかかるしまなみ海道の高速を越えればすぐそこが尾道になる。
行けない距離ではない。
でもその前に人に会う約束をしている。
世界一周中にずっとブログにコメントをくださっていた夢家族さんに挨拶に行く予定だ。
お昼までに行きますとメールしているので、コンビニでカップラーメン食べたらすぐにヒッチハイクを開始した。
待つこと30分。
止まってくれたのは女の人で、大洲まで帰るところだけど、もう松山まで送って行きますよとおっしゃってくれた。
すげえ!!一撃!!最近のヒッチの精度やべえ!!
「今子供を保育園に送っていったところなんですよおおお。」
乗せてくれた女の人はまだ若くて素朴などこにでもいる田舎のお母さんだった。
柔らかい雰囲気で、とても和む。
「西松屋で働いてたんですよー。」
あー、やっぱり子供が好きな優しい女性なんだなぁ。
「そうなんですねー。やっぱり子供とか好きなんですねー。」
「西松屋の前がデリヘルしてたんだー。」
「へー、デリヘルですかー、それはいいですね、デリヘル!!?」
「そうなんよー、もう死のうと思ってた時期があってねー。えへへぇ。あ、トイレ大丈夫ですかぁ?」
トイレとかいいです。
不思議ちゃんでした。
面白いドライブでした。
ちなみに昔、イタ車に乗ってたらしいです。
車にカッティングでアニメのキャラクターとか貼りまくってたりする人いるじゃないですか。
あれイタ車っていうらしいです。
イタリアの車じゃないです。
到着した松山のえみふるというショッピングモールで待ち合わせをしていたのは、松山のシンガーである夢家族さんとこ、豊田さん。
想像していたミュージシャンファッションではなくダンディーで紳士ないでたちをした豊田さんの車に乗って向かったのは豊田さんのご自宅だった。
白壁の蔵と古風な日本家屋という風情しかないようなお宅なや中は、なにやら和雑貨など様々な小物がセンス良く飾られて、まるで昭和にタイムスリップしたかのような感覚になる。
そして隣の部屋に入ると、驚きの光景が。
部屋の中には15人ほどのおじさまおばさまたちが椅子に座っていた。
部屋の角に置かれた椅子と譜面立て。
「みなさんお待ちかねでしたよ!」
豊田さんが、せっかくだからミニライブしましょうとおっしゃっていたのだが、まさか昨日の今日でこんなにたくさんの方が集まってくださるなんて。
しかも半分くらいの方がブログを読んでくださってたようで、暖かく迎えてもらえた。
上品なマダムたちに囲まれての1時間ほどの演奏とお話。
なんとも穏やかで、たくさんの拍手をいただき、たくさん写真を撮った。
しかも持ってきていたCDを一人残らず全員が買ってくださり、お心づけまでいただいてしまった。
バレンタインが近いということでチョコをもらったり、僕がお酒が好きなのを知ってる方が愛媛の地酒をくださったりと、もう至れり尽くせりの一時間。
初めてお会いした豊田さんだというのに、すぐにこんな素敵な会を開いていただけるなんて感謝の言葉もないです。
本当にありがとうございます!!
みなさんまたお会いできたら嬉しいです!!!
松山からは豊田さんのご友人の松田さんに今治まで送っていただくことができ、四国と中国地方をつなぐしまなみ海道の高速乗り口まで連れて行ってもらった。
松田さんにお礼を言ってすぐにヒッチハイク開始。
そしてすぐにゲット。
岡山まで帰るという建築関係の営業マンさんの車で瀬戸内海を渡っていく。
海に散らばる大小の島を橋で広島までつなぐしまなみ海道。
その景色は風光明媚の一言。
入り組んだ島々が内海に散らばり、遠くの島は薄く霞んでいる。
波のない海を漁船が音もなくゆっくりと動き、ミカンの段々畑が斜面に広がっている。
どこの島にも集落や小さな漁港があり、造船所のドックに数本のクレーンが立ち、それに寄り添うように民家が固まっていた。
夕日が遠くに沈み、海面を赤く染め上げていく中、ドライバーのお兄さんの岡山弁がとても旅情をかきたてる。
瀬戸内海は旅というものの憧れを秘めた日本の原風景がある。
尾道に着いた。
瀬戸内海の町の中でもおそらく1、2位を争う観光地で、細い水道を挟んで広がる密集した町並みは時が止まったレトロなものだ。
すぐ背後には小高い山があり、民家がその斜面を埋め尽くしているのだが、それ以上に数多くのお寺がこの山には散らばっている。
明日ゆっくり散歩しよう。
その前にやるべきことがある。
そう、路上で歌…………
ラーメンに決まってんだろうがコノヤロウ!!
路上なんてやってる場合じゃねぇバカ!!
いやああああああああああああああ!!!!
憧れ続けた尾道ラーメンーーーーーーーー!!!!
ぷりぷりの甘い背脂が浮かんだ正統派醤油ラーメンを世界周りながらどれだけ恋い焦がれたと思ってんだインド人め!!
やったああああああああああああ!!!!!
でも、大好きなお店はもう閉まっていたので仕方なくクラウン。
尾道の人なら全員知ってるクラウン。500円。ラーメンはこの値段が基本ですよ。
900円のラーメンって一体なにが入ってるんですか?
尾道のネオン街、新開。
細い路地が蜘蛛の巣のように入り組んだかつての遊郭街で、一説には売られた遊女が逃げ出しても簡単に町から抜け出せないようになってるとさえいわれるほどの複雑な迷路に、スナックのネオン看板がひしめいている。
とはいっても、ずいぶん寂れた気もする。
俺が来ていた5年前はもっと活気があった。
地方都市あるあるだが、地元の人はみな口を揃えて言う。
「30年前はここは肩をぶつけながらじゃないと歩けないほど人で溢れかえっていたんだよ。」
いつもの場所で歌った。
人はあんまりいない。
でもゆっくりと、あの頃の感覚を思い出すように、夜のアスファルトにギターを鳴らす。
ああ、いつもここで歌ってた。
たくさんの人に出会って、そこそこ危ない目にもあったこの場所。
夜の女の人の流し目に浮気心がくすぐられたり、酔っ払いにからまれて面倒なことになったり、夜の街には色んなドラマがあった。
タクシーのヘッドライトに照らされて、電信柱の横のポリバケツに野良猫が動く。
角の向こうから笑い声が聞こえてくる。
タバコ屋に走る飲み屋のホステス。
お客さんのお見送りに出てくるホステス。
その女の人に抱きついてキスしようとするおじさん。
うーん、田舎のスナックのホステスさんは肩パットがでかい。
「おー、この下手クソ。帰ってきよったのぉ。」
顔を上げると、そこには尾道で一番お世話になった松谷社長がいた。
ニコニコしながら両手を広げてハグしてくれた。
この路上で知り合ってからずっと、ずっと飲みに連れて行ってくれ、家に泊めてくれた社長。
もはや息子のようにいつも俺のことを無条件に受け入れてくれている。
モロッコでiPhoneをなくしたことで電話番号がわからなくなっていたのだが、インターネットで会社を調べて電話をかけることができたので、尾道の到着を知らせることができた。
久しぶりの尾道の路上は、緊張したが感覚を取り戻すにはうってつけだった。
やはり酔客たちは英語よりも日本のフォークソングを聞きたがる。
海外ではほぼ開くことのなかった歌本のフォークソングページをめくり、かぐや姫や吉田拓郎を歌うとすぐに合唱が起こって千円札が入る。
俺は路上ではあまり自分の曲はやらない。
路上は楽しんでもらってナンボだ。
特にお酒の入った人に自分の曲を熱唱してもそうそうお金は入らない。イコール歌を聴いてもらえない。
もっと歌いこんで友達たくさん作って喉を鍛え直すぞ。
今日のあがりは1万8千円。
それから松谷社長と仲良くなったドングリみたいな可愛い女の子と3人で飲みに行き、スナックで顔なじみのホステスさんたちと再会し、瀬戸の花嫁を歌って大盛り上がり。
ダンディーな松谷社長は男前なので、いつもホステスさんたちに手を握られて、ねぇ~、社長本当にカッコいい、カッコいいわ~、と色気を使われている。
そこに尽くす女ですアピールの演歌を歌ってくるという夜の女のベテラン技を繰り出してくる様子がなんとも微笑ましい。
田舎のスナックにはその町のいいところが全部詰まってる。
可愛いドングリ女の子とバイバイして、迎えに来てくれた松谷ママの車で家に帰った。
もはやそれくらい何度も泊まらせてもらっていた家には、新しい犬が増えていた。
ゲロ可愛い。
ママの手作りの筑前煮をつまみながら焼酎を飲んだ。
いつも熱い話をしてくれる社長。
それがとても心地いい。
世界一周から無事戻ってきたことを本当に喜んでくれた。
「フミ、お前がカナダでシェルターにおったりインドで全財産なくしたりするのをブログで見ちょった。死ぬ思いをしながらたくさんの人に助けられたのぉ。今日フミの歌を聴いてワシは心底感動したぞ。ワシゃあ、今までお前に歌で負けたと思ったことは一度もありゃせん。でも今日は完敗したと思うた。苦労したぶん人間の幅が広がったんじゃ。心で歌が歌えるようになっちょる。」
松谷社長にはいつも下手クソじゃのぉと言われていた。
一度も上手いって言われたことはなかった。
どうやれば社長に上手いって言わすことができるだろうと思いながらいつも必死な歌ってきた。
別に今自分が上手くなったとは思わない。
もっともっと、全然足りない。まだまだやれると思う。
でも、ほんの少し、歌い方が変わったとは思う。
それが心を乗せられてる歌かどうかはわからない。
そうなってると信じたい。
色んな経験した。
なんも変わらなかった生きてることにならんよな。
松谷社長の目が赤くなっていた。
頑張ったねぇと、ママは横でずっとティッシュで目をおさえていた。
コタツに入って、遅くまで焼酎を飲んだ。
『ライブ情報』
とっても暖かい自由なライブです。
どなたでもお気軽に遊びに来てください。
そしてお時間ありましたら飲みましょう!
また宮崎の焼酎持って行こ!!
【2月28日】(土)
open 19:00
start 19:30
charge 2000円(ドリンク別)
出演 IKKYU chili 金丸文武 【ゲスト】天羽柚月
場所:東京 三軒茶屋
ライブバー四軒茶屋ホームページ
実力派シンガーのイッキュー君とchiliさん。
そして天羽さんは「日本一下手な歌手」として紅白出場を目指すシンガー。
身体障害を持っており、その壮絶な人生をそのまま曲にした歌には半端じゃない力があります。僕はまだ動画でしか観たことありませんが、きっと生はヤバイだろうなと思います。
かなりディープな夜になりそうな予感です!
【3月1日】(日)
開場 18時30分
開演 19時00分
出演 金丸文武、川田ようすけ
料金 2,000円(ドリンク別)
場所 : 東京 三軒茶屋
ライブバー四軒茶屋ホームページ
大好きな尊敬するシンガーソングライター、川田君とのツーマン。
パリのサプライズで僕の旅にも登場してくれた川田君とこうして正式に対バンするのは彼と初めて会った時以来じゃないかな。
この日は2人でお互いの曲もやってみよう!という話になっていますので、僕もめちゃ楽しみです!!
【3月3日】(火曜日)
『地球探検隊 旅パ!』
受け付け開始 19:00
ラストオーダー 22:00
料金 2000円(ワンドリンク+軽食)
場所 Polder Cafe 新宿店
個性的でワクワクするような旅を企画する旅行会社をやってらっしゃるカッコいいおじさま、中村隊長の主催するイベントです。
旅好きが集まるカフェで歌わせてもらいます!
あ、この地球探検隊のイベントは予約制となりますので、リンクのページから予約フォームに記入をよろしくお願いいたします!