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Channel: 金丸文武 3年で出来ること
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旅立ちの日 もっと後半

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八幡浜はすでに夜の闇に覆われていて、岸壁には冷たい風が吹いていた。


船から降りてきた車やツアーバスがどやどやと町に吐き出される横を1人歩いていく。


ギターとキャリーバッグを持つ手が冷たくて、スロベニアで買った手袋をはめて歩いた。
静まり返った町の中にぽつりとホットモットの看板が光っている様子が日本の田舎を象徴している。

八幡浜はチャンポンの町として現在売り出しているらしい。
地方のB級グルメはその町に行く大きな旅の理由になる。









チャンポン楽しみだなぁと期待しながらネオン街を探した。

ずっと前に八幡浜でも路上をしたことがある。
夜のスナック街で歌っていくらか稼ぐことができた覚えがある。
グーグルマップを見ながら、路地が入り組んだネオン街特有の地理をしたあたりに足を向ける。





もう路上をすることもないだろうなと、日本に帰ってきたときは思っていた。

次のステップに行くべきだとなんとなくそう考えていた。


でもやはり、色んなものが降り積もり、周りがどんどんと新しい道を俺の前に用意してくれる状況になっていくうちに、まだ次のステップとか言うのは早いなと思うようになっていった。


初心でいよう。
まだ何者でもない。









4ヶ月半ぶりの路上なのでちゃんと声出るかな、とドキドキしながら八幡浜のネオン街に向かったわけだが………






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こんなに寂れてたっけか?



まったく人がいない。


町の中心部にひなびたアーケード街があるんだけど、暗く沈んで薄気味悪い迷路みたい。

その中をグルグル歩き回ってみたけど、スナックが数軒あるだけで歩いてる人はほとんどいない。



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こ、こりゃ歌えない………

前にここで歌ったのは7年前くらいかな。
もしかしたら日本の地方都市はたったの7年でさらに元気がなくなってしまったのかな。

ちゃんと日本仕様に感覚を切り替えていかないと路上もなかなか厳しそうだ。
北海道までたどり着けるかな。










まぁ久しぶりの旅初日だし、仕方ないかと路上は諦め、向かったのはとあるライブハウス。

今夜八幡浜に行くということで、愛媛の友人が◯◯っていうライブハウスがあるから覗いてみるといいよーと教えてくれていた。

別に行くあてもないし、ちょうど地元の有名なシンガーがライブをやってるとのことなので、ビール飲みながらライブ観ようかとやってきた。






裏路地に看板をあげていたライブハウスの前には自転車がたくさん止まっていて、近所のお客さんたちが入っているのがわかる。


店のドアを開けると暗い店内ではすでにライブをやっており、かなりのお客さんで賑わっていた。


ドアを開けた瞬間、俺に視線が集まる。
なんだこいつ?みたいな感じでおばちゃんたちが見てくる。


え?なにこの感じ。みんな不審者を見る目つき。
そ、そんなに僕が変質者に見えますか?


あまりに視線が集中するので、え?これ貸し切りライブですか?と聞いた。
ライブのチラシにはご旅行のついでに是非どうぞ!みたいな文句もあったし、貸し切りなんてことはない。


するとおばちゃんの1人が奥に入っていった。

少ししていかにもライブハウスのマスターらしき人がやってきた。



「あ、金丸さんですか?今日来られることは聞いてました。ただライブなのであまりゆっくりお話しできないんですが………」


「あ、はい、僕ただライブ観てビール飲めればいいんですが。」


「あ、じゃあチケット代お願いします。」




なんか微妙な空気だなぁと思いつつ、お店の外に置いてあったスーツケースを入れようとしたらマスターが言った。



「あー、ごめんなさい、お客さんいっぱいだし、出演者の機材とかもあるので荷物は無理ですねー。ごめんなさい。」


「え?…………無理ですか………?」


「はいー、無理ですー。」


「……………」 




俺の言葉を待ってるマスター。




「あ、はい……じゃあ今日は遠慮しておきます………」


「はいー、ごめんなさいー。」






スーツケースひとつで門前払い。

え、えええ………スーツケースひとつ入れられないですか……?

釈然としなさすぎる………






でももう仕方ない。
なんか身内の方々で盛り上がってるようなところにギター持って行って、もしかしたら一曲やらせてもらえませんか?みたいなつもりと思われたのかもしれない。

マスターからしたら地元から出たメジャー歌手のライブでそんなことはできない。


そんな風に思われながら店にいるのも居心地か悪い。









仕方なく歩いた。

行くあてはない。

夜の静まり返った町の中にドイツでエミリーとマイケルにもらったカウベルがチリンチリンと音をたてる。
懐かしい1人の夜。

しかし久しぶりの1人だからか、新しい旅だからか、孤独が結構重くおおいかぶさってくる。

寒くて手袋をつける。








バッグで肩が痛くなってきたころに、たまたまジョイフルを見つけた。

寂しさを紛らわしたくて明かりに誘われて中に入った。

ビールを注文してドリアを食べた。



なかなか厳しいな。
路上で稼ぐことはそのうち日本のやり方にも慣れて上手くやっていけるはず。
でも、久しぶりの孤独はそれなりに心を弱らせる。
俺はまた旅をしてるのかという事実にふと、驚いてしまう。








ビールを飲んで体も温まり、ゆっくりしているところだった。

数人のお客さんが入ってきた。
いかにもミュージシャンですといった服装をした男の人が俺の向かいのボックスに座った。


「あ、こっち俺座るよ。マスターがそこ座るかな。」


そんなことを言ってる。
まさか、と思った。



すると入口からさっきのライブハウスのマスターが入ってきた。
なんてこったよ、打ち上げ終わりでこのジョイフルに来るなんて。


目の前の席に座るマスターたち。
あまりの気まずさにいただまれなくなってきた。

さっき門前払いをした男がずっとジョイフルにいたのか、なんて思われたらたまったもんじゃない。実際そうだ。

出て行こうと席をたった。


「あ、さっきはどうも。」


「あ、あー、どうも。」


なんとも気まずい挨拶を交わす。


「それじゃあ失礼します。」


「あ、はい、また寄ってください。」




寄れないよと思いながらジョイフルを出た。







行くあてのない夜。

手袋をはめてダウンのチャックをしめる。

寝床を探して歩いた。


寒い。
でもこっからだ。
こっから始まるぞ。








『ライブ情報』

とっても暖かい自由なライブです。
どなたでもお気軽に遊びに来てください。
そしてお時間ありましたら飲みましょう!
また宮崎の焼酎持って行こ!!




【2月28日】(土)
open 19:00
start 19:30
charge 2000円(ドリンク別)
出演 IKKYU  chili  金丸文武   【ゲスト】天羽柚月

場所:東京  三軒茶屋



実力派シンガーのイッキュー君とchiliさん。
そして天羽さんは「日本一下手な歌手」として紅白出場を目指すシンガー。
身体障害を持っており、その壮絶な人生をそのまま曲にした歌には半端じゃない力があります。僕はまだ動画でしか観たことありませんが、きっと生はヤバイだろうなと思います。

かなりディープな夜になりそうな予感です!





【3月1日】(日)
開場  18時30分
開演  19時00分
出演  金丸文武、川田ようすけ
料金  2,000円(ドリンク別)

場所 : 東京  三軒茶屋



大好きな尊敬するシンガーソングライター、川田君とのツーマン。
パリのサプライズで僕の旅にも登場してくれた川田君とこうして正式に対バンするのは彼と初めて会った時以来じゃないかな。

この日は2人でお互いの曲もやってみよう!という話になっていますので、僕もめちゃ楽しみです!!





【3月3日】(火曜日)
『地球探検隊  旅パ!』
受け付け開始  19:00
ラストオーダー  22:00
料金  2000円(ワンドリンク+軽食)
場所  Polder Cafe 新宿店




個性的でワクワクするような旅を企画する旅行会社をやってらっしゃるカッコいいおじさま、中村隊長の主催するイベントです。
旅好きが集まるカフェで歌わせてもらいます!

あ、この地球探検隊のイベントは予約制となりますので、リンクのページから予約フォームに記入をよろしくお願いいたします!








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