2015年9月4日(金曜日)
【和歌山県】 田辺市
梅干しの町、田辺。
紀州南高梅の甘さとコクはおにぎりとの相性バツグンで、それだけでも酒のつまみになる。
梅林に花がつくころになると山が真っ白に染まり、その向こうから炭焼きの煙が流れてくる。
備長炭の炭焼きだ。
炭焼き人が、山の中の小屋で煙にまみれて炭を作る。
梅の花の下で赤いポストがたたずみ、誰かがこの町を出て行くのを見送り、そして帰ってきた人を迎えている。
誰も見ていないようで、誰もが目にしている風景。
そんな静かな町。
初めて来たのは23歳のころかな。
三重県から和歌山に入り、新宮、勝浦、本宮、串本と進み、山ばっかでガソリン食うなぁと思いながら田辺に着いた。
もうすでに日本一周も後半にさしかかっていたので路上のポイント探しも慣れたもので、すぐに味小路という飲み屋街を発見。
そこでギターを鳴らしてから、早10年。
たくさんの友達ができて、たくさんの夜を過ごしてきた。
結婚した人、別れた人。
音楽のグループを作ってデビューした人。
何度もライブした大好きだったお店がなくなったり、お世話になった社長が会社をやめたり。
思い出せばキリがないし、昨日西前さんと飲みに行ったときに、あんなことがあったよなぁって言われて思い出せないような話もいくつかあった。
それくらい昔なんだよな。
ずいぶん時間が経ったなぁ。
ホームタウン
ここも誰かのホームタウン
忘れてしまいたいことも
思い出せないことも
ごちゃ混ぜにしてホームタウン
そんな田辺で、ある夜誰かに連れてきてもらったのがウツボムーンというお店だった。
田辺のフォーク好きが集まるお店だよと言われてドキドキしてお店に入ると、ウッド調の店内にヒゲのマスターがいた。
隅から隅まで整理整頓されたマスターのこだわりのお店。
こだわりというかマスターの性格がこれでもかと表れた潔癖ぶり。
そんなお店で、いきなり歌ってみなと言われ、恐る恐る何曲か歌った。
マスターはそれを気に入ってくれ、数ヶ月後にワンマンのイベントを組んでくれた。
たくさんのお客さんが来てくれ、とても盛り上がり、もう田辺は僕の中で無くてはならない存在になった。
ウツボムーンはすごいお店だった。
何がすごいって、ライブをしに来るメンツ。
加川良、AZUMI、有山じゅんじ、金森幸介、ほかにもたくさん。
日本を代表する実力派のベテラン弾き語りミュージシャンたちが足繁くライブに通うこの店は、フォーク好きには聖地のような場所だった。
まぁ、そういったアコースティックの大御所たちが出るお店は全国にたくさんあるんだけど、ウツボムーンがそれらと一線を画していたこと、それはアーティストと地元ミュージシャンの隔たりがないこと。
加川良のライブが終わった後に、地元ミュージシャンがステージで歌を披露したり、
AZUMIさんのライブの途中に地元ミュージシャンのコーナーがあって、そこでAZUMIさんバックギターを弾いてもらったり、
とにかく他の店では考えられないようなことが起きるのがこのウツボムーン。
不思議な魅力のあるお店。
ここで、どれほど多くのことを学ばせてもらったか。
フォークは極限まで要らないものを省くもの。
余計な言葉はないほうがいい。
ずっとそれを考えながら歌詞を書いてきた。
そんなウツボムーンが来月、閉店する。
理由は、マスターのタメさんが年金をもらう歳になるから。
最初からタメさんは、年金をもらう歳になったら店を閉める、と決めて50歳の時にウツボムーンをオープンしたんだそう。
潔癖で、神経質で、全てのものがキチッ、キチッとあるべき場所にあるように整えるタメさん。
地面に落ちてるタバコを拾い出したら止まらなくなって、気がついたらいつの間にかわけわからんとこまで歩いてしまったり、
駅前に止めてある自転車の並べ方が気にくわなくて、1人でずっと完璧な状態に並べたり、
とにかく神経質な人。
だから、どんなに惜しんでくれる人がいようとも、年金をもらうようになったら店をやめるという決まりごとをタメさんがキチッと守るということに特別驚きはしない。
さすがタメさんというところ。
でもやっぱり、ウツボムーンがなくなるのは寂しい。
日本の弾き語り業界にとってとてもとても大きな損失だと思う。
そんなウツボムーンで明日少し歌わせてもらうことになった。
世界一周して、今回初めてタメさんに聞いてもらう。
あれから少しは要らないものを見つけて、それを削ぎ落とせただろうか。
大事なものだけを残せているだろうか。
大事なものと捨てたいもの
それが逆にならないように
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次のイベントは9月の20日、日曜日!!
六本木CUBEというイベントスペースにて異業種交流会です。
まだ異業種交流会ってのがよくわかりません。合コンでしょうか?違いますか。そうですね死にます。
死にません。
旅好きが集まる会のようで、僕がゲストとしてお喋り&弾き語りをさせてもらいます。
今回は主催者さんのご意向もあり、本の中で書けなかったエグい話を中心にしてもらいたいとのこと。
僕は思いました。
(ほう、君もか。)
これがマウント斗場のセリフだと分かったとは話が2時間できそうです。
というわけで9月20日は刃牙の話を中心にやらせていただきたいと思います。旅のエグい話も!!
女子にひかれるだろうなぁ…………
質問とか飛び交うアットホームなイベントにしましょう!!
「金丸さんってスペインで牛に追われてましたけど、鎬昂昇みたいに紐切りでやっつけなかったんですか?」
みたいな質問、お待ちしてます!!
ていうか合コンしてええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!