ライブ後半……………………
ステージに1人、ショータ君がスタスタと歩いていく。
なにやらカメラの横で懐中電灯を持ってクルクル動かすショータ君。
音もなく、ただ懐中電灯の光を客席に向けて動かす。
この謎の行動。
その理由はのちほど。
ショータ君が袖にはけると、ステージにヒラセドくんチームが入った。
ステージのバックスクリーンには、ショータ君の作品である月の写真が、孤独に映し出されている。
そしてヒラセドくん作曲のクラシック音楽がチェロ、バイオリン、ピアノの編成によって優雅に流れ始めた。
今回のライブのテーマは、
「金丸キャンプ場の一夜の出来事」
なのでステージの真ん中にはテントを置いてある。
キャンプのためのテント。
そして横には洗濯物を干しており、椅子の代わりにビールケースが置いてある。
旅の中での橋の下を再現している。
このステージは、まさに旅の途中であり、その一夜に起きた不思議な出来事。
その空間を作り上げるための最初の入り口がヒラセドチームのパフォーマンス。
ピアノは天才作曲家のヒラセド君。
チェロは天才チェリストの林田ジュンペー君。
バイオリンは天才バイオリニストのセナちゃん。
いずれも猛者。
素晴らしい出だし。
1曲目が終わり、2曲目が始まったとき、舞台袖から出てきたのはダンサーさん。
白いヒラヒラした服をまとったこの女性はアリサちゃん。
数多くの舞台で踊りを踊ってきているダンサーだ。
ヒラセド君のクラシック音楽に合わせて躍動する踊りは、まさに人生を表していた。
苦悩とか、喜びとか、葛藤とか、様々なものが体のすべての動きからにじみ出ていた。
めっちゃ美しかった。
泣きそうになるくらい美しかった。
不思議な夜、橋の下で起きる出来事のエピローグにふさわしい素晴らしいダンスと音楽。
そしてその後ろにはショータ君の作品のシリーズである月の写真が映し出されている。
この舞台はショータ君がプロデュースしているもの。
音楽、ダンス、写真、そしてもうひとつが仮面だ。
ショータ君は今回のライブのために手作りで仮面を作ってきている。
それをダンサーさんにかぶってもらい踊るという一見、前衛的な舞台。
さすがヨーロッパで感性を磨いてきたショータ君。
ただのステージにはしない。
仮面は動かない。
表情のない仮面が躍動する体を支配している。
それがより一層様々なことを表現している。
感動的なヒラセドチームのパフォーマンスが終わると、今度はステージの反対側でうてなちゃんチームのパフォーマンス。
さっきまでのクラシック音楽とはうって変わって、民族的な怪しい音楽が流れ始める。
コーラス、そしてスチールパンを使い、自然の音と大地の音がミックスし、リズムを刻んでいく。
そこに現れたもう1人のダンサー、東条さん。
世界的なベリーダンサーだ。
妖艶とはまさにこのことといった踊りに舞台の空気が一気に変わり、不思議な世界に迷い込んだような錯覚に陥る。
バックスクリーンに映っているのは、ショータ君の作品シリーズである、水面の揺れだ。
薄暗い照明にきらめく衣装の見せ方、体の動きはさすが東条さん。
天才うてなちゃんの音楽とダンス、写真が見事に融合している。
後半になり、リズムが熱を帯び、ダンスは激しさを増しながら、まるで焚き火の炎が燃え上がるように夜空を焦がして、うてなちゃんチームのパフォーマンスは終わった。
完璧なライブ前半。
空気は完璧に出来上がった。
そこはもう見事なまでに不思議な夜の、野宿の橋の下になっていた。
「はいどーもー!!金丸文武ですー!!」
「はいどーもー!!ショータミヤケですー!!」
はい、アホが2人登場^_^
ビールケースの椅子がいい味出してる!!!
「いやー、ショータ君これからアメリカ横断だね!!頑張って!!」
「フミ君経験者やもんね!気をつけることってなに!?」
「そりゃあもう、ゲイですよあなた。ゲイはすぐあなたを狙いますよ!!」
というただの漫才を繰り広げて、しばらくお喋りしたら、次にこのトークのメインである、3年夢の発表。
このライブに来てくれたお客さんには、みんなにそれぞれの3年の夢をチケットに書いてきてもらい、それを受け付けで回収している。
箱の中にたくさん入った夢の紙を適当に引き、発表していく。
今回のイベントは全員が3年の夢を持ち寄って、お互いに応援しあおうという主旨なので、僕らにできることをトークできればいいと思っていたんだけど………
「美熟女になりたい」
「田舎暮らしがしたい」
へ、変な夢しか出ねぇ!!(´Д` )
もっとカッコいいやつを真面目に話したいのに!!(´Д` )
美熟女になることをどうやって応援すればいいんだ(´Д` )
3枚ほどひいたら、ここからは仕込みです。
ポケットの中に前もって入れていた1枚の夢の紙。
これは、我らがみゆきさんの紙。
みゆきさんは以前、3年以内にイラストレーターで食べていけたらいいなぁということを話していた。
ならば今回のチケットのイラストのギャラをここで支払って、イラストレーターで食べていくということを応援しようというアレです。
「みゆきさん、出てきてー!!」
「えええええ!!聞いてないよおおおおおお。」
慌てふためくみゆきさんを無理やりステージまで引っ張り出して、強引にギャラを渡してサプライズ完了。
トークコーナーもこれで終わり。
よーし、いよいよ次は俺のライブの番だ……………
「あ、あれ?こんなところにもう1枚紙があるぞ?」
ん?ショータ君どうした?
サプライズのコーナーはこれで終わりのはず。
おいおい、段取り勘違いしてるんじゃないか?
頼むよショータ君、俺がリードしていかなきゃ……………
「このかたの3年以内の夢、情熱大陸に出ること!!これ書いた人、出てきてくださいー!!」
は?なんだなんだ?
マジでなにをしようとしてるんだ!?
すると客席のはじのほうから、いかにもカツラのロングヘアー、身体中に変な布切れを巻きつけた変人がステージに上がってきた。
会場のお客さんたちも意味がわからずにステージの出来事を見守っている。
え!?なに!!??
なに誰!!!??
誰なの!!??
マジでわかんねぇ!!!!
「金丸さん、旅楽勝じゃないじゃないですか。」
続く……………