静岡の人ならみんな知ってるというハンバーグレストラン、さわやか。
道路沿いにあるデニーズみたいなファミレスなんだけど、ここのハンバーグがめちゃくちゃ美味いんだよと高橋さんが何度もオススメしてくれていた。
よーし、二日酔いの昼にハンバーグかー、気合い入れていくぞおっしゃー!!!!オボゲエエエエエエエ!!!!!
オエッ!!オエッ!!
さわやかのトイレでゲロ。
ひとつもさわやかじゃない。
すっごい美味しい。
もうすっごい美味しい。
ハンバーグレストランのハンバーグなんてまぁどこも似たようなもんだと思ってたけど、ここはマジで違う。
ひき肉がかなり原型をとどめてるくらい肉肉していて、すっごく旨味がある。
中がまだ赤いくらいがちょうどいいと高橋さんが言っていたけど、確かにレアの部分の柔らかさがたまらない美味しさ。
こいつはまた来たい!!!体調が万全の時に!!!!
高橋さんとカンちゃんがニコニコしながら食べてる横で青い顔して味噌汁飲んでました。
キツすぎる…………
でも食べたおかげで少しは体調も楽になった!!!
高橋さん!!洋子さん!!
今回も本当にお世話になりました!!!!!
今度はアツシ君とまたどこかで歌わせてください!!!
ありがとうございました!!
飲みすぎで体壊さないでくださいね!!
というわけで体調もだいぶよくなったところで静岡を出発し、向かうは一路イクゾーの故郷、富士市。
1号線をひた走って静岡市を越え、ハンバーグマジで美味かったし!!俺ちょびっとしか食べてねぇし!!と言ってるうちに何か変な臭いがしてきたら富士市に突入だ。
富士には巨大な製紙工場がある。
工場のある町ってノスタルジーがかきたてられて好き。
イクゾーのルーツをたどる旅。
まずは新富士駅到着。
うおー………イクゾーもこの辺りで遊んでいたのか………
子供の頃からあんな顔だったのかな…………
でも新富士駅は新しい駅。
新幹線の止まる駅としてかなり豪華な建物ではあるが、周りは閑散としている。
昔からのダウンタウンの駅は別にある。
「よーし、カンちゃん、フェイスブックから何か情報わかった?」
「うーん、わかんないなぁ。友達のこととかは書いてるんだけど、実家の手がかりはないよー。」
「んんん………そう簡単にはいかないか………」
「どうする?」
「とりあえずそこに寄ろうか。」
富士宮やきそば。
美味しい。
「あ!!そうだ!!ジェニファーさんに聞いたらなにかわかるかもしれない!!ジェニファーさん、イクゾーが日本に帰ってきたときに潜伏の手伝いしてたから!!」
「そうだね!!ちょっと聞いてみる!!…………あ、返事きた。すごい住所わかった!!!住所送ってくれたよ!!!」
ジェニファーさんすげぇ。
1発でたどり着いてしまった。
おいおい、イクゾーの実家を探し出してお母さんと写真撮ってイクゾーに送ろう大作戦、こんなに簡単に達成してしまったよ。
今の時代すごいよなぁ。
メールですぐにやりとりできるし、フェイスブックで個人情報調べられるし。
そして住所を車を走らせていくと、それらしき建物が見えてきた。
これか。
車を止めて家の前へ。
かなり綺麗なお家だ。
なんか感慨深いな………
ここでイクゾーは育って、大きくなって、思春期を経験し、大人になり、工場の中で上にグリーンピースが乗っていない不良品のシュウマイを取り除く仕事をしていたのか。
イクゾーのルーツがここにある。
イクゾー、お母さんにキチンと挨拶させてもらうね!!!!
呼び鈴を鳴らしても出てこない。
あ、あれ?
いない?
う、うん、まぁいるわけないか。平日の昼間に。
お仕事行ってるよな。
あれ?どうしよう。
お仕事終わって帰ってくるの待つか?
それじゃ何時になるかわかんねぇ。
時間は今日しかない。
それに夜は路上に行かないといけない。
家の前で待ち続けるような悠長なことはしていられない。
どうする?
「イクゾーのお母さんって確か美容師さんじゃなかったかな。」
「そうだっけ?」
「うん、美容師って言ってた気がする。」
「よし、じゃあお店に行こう!!お店の名前なんてとこだろう。」
「やっぱりあれじゃない?小林ってのが入ってるんじゃない?………あ!!ホラ!!Googleマップで調べたらこの近くに小林美容院ってのがある!!」
「間違いねぇ!!そこだ!!行くぞ!!と、その前にそこに寄ろうか。」
富士宮やきそば。
美味しい。
ついにお母さんに会える!!
ドキドキしながら車を飛ばすと、住宅地の中にひっそりとそのお店、小林美容院はあった。
こ、ここか………ここがイクゾーのお母さんのお店か………
完全に個人でやっているような小ぢんまりとしたお店だ。
ということはイクゾーも昔からお母さんにプロの腕で髪を切ってもらっていたのか…………
旅してる時はもう人じゃないような髪の毛になってたけど。
よーし!!お母さん!!
ご対面だぜ!!!
「こんにちはー、こんにちはー!!」
「あー、はいはい、どちらさまですかー?お客さん?髪の毛長いわねぇ。どれくらい切ります?」
店内はマダムが来るようなどこにでもある近所の美容院って感じ。
声をかけると奥から上品なおばちゃんが出てきた。
この人か。
イクゾー。この人が君を育てたんだね。ついに会えたよ。
「はじめまして。金丸といいます。小林さんの息子さんのイクゾー君と友達で、挨拶に伺いま、」
「誰だそれ?」
「え?いや、あの、ピスタチオみたいな顔した翼を下さいを歌わせたらこの世で右に出る者のいないあの小林イクゾーで、」
「そんなやつは知らん。」
まさかの小林違い。
そりゃそうか。小林ってだけであいつの家族なわけねぇよな。
「うーん!どうする!?なにか他に手がかりはないのか!!」
「もうこうなったらイクゾー君のフェイスブックの友達にメール送って聞いてみる?どれが親しい友達かはわかんないけど。」
「うーん………いきなりメールでそんなこと聞かれても怪しまれるよなぁ。」
「どうしよっかー………そんなに簡単にはいかないねー………」
「あ!!そうだ!!!そういえば前にジェニファーさんと一緒にイクゾーが昔バイトしてた焼き鳥屋さんにイタズラしに行ったことがある!!あそこなら手がかりがつかめるかも!!」
というわけで、かすかな記憶を頼りに富士の町を走り回り、駅裏の商店街の中になんとかその焼き鳥屋さんを見つけ出した。
ここだ。
ここの店員さんたちならイクゾーの情報を何か知っているかもしれない。
富士はそんなに都会じゃないので、きっとみんな顔見知りだったりするはず。
おそらく家庭のこととかも詳しいと思う。
「すみません!!小林イクゾーの過去とかとりあえず置いといてアレを一丁!!」
「はいよ一丁おお!!」
焼きそば食いすぎ。
しかしこの焼き鳥屋が当たりだった。
「あー、イクゾーですか?あいつとは付き合い古いのでわかりますよ。あいつの音楽のお仲間ですか?」
店長さんも他のスタッフさんも、みんなイクゾーのことを知っていた。
しかもかなり親しい様子。
こいつはもしかして!!
「いやー、あいつこの前まで世界を旅してたんですよ。オーストラリアとかベトナムとか。歌いながら。すごいやつですよ。」
「本当あいつすごいですよね。」
「今は釧路にいるんですよ。仕事で。」
「あ、そこまでは僕も知ってるんですけど、あいつのお母さんってどこにいるかわかりますか?」
「ああ、おーい、イクゾーのお母さんエジンバラだよな?すぐそこにエジンバラってスナックがあるんですけど、そこで働いてますよ。」
うおおおおおおお!!!!
ついに突き止めた!!!!
ついにイクゾーのお母さんの居所を突き止めたぞ!!!!
焼き鳥屋さんにお礼を言って店を出た。
ソワソワしながら富士の飲み屋街の中に入っていくと、そこにはたくさんのスナックの看板が並んでいる。
それらの看板の中に確かにエジンバラという看板もあったが、まだ時間が早いのでどこもオープンしていない様子だった。
スナックならば20時にはオープンするはず。
まだ二日酔いの残りで疲れていたので、車に戻って仮眠をとった。
小林イクゾーは規格外だ。
どんな型にも当てはまらない。
それは若さもあると思うけど、やっぱり根底のあいつの性格が1番の理由だろう。
なんの常識にもとらわれていない。
あんなに素敵なバカはなかなかいない。
でも実は頭が良くて、めちゃくちゃ空気を読むのが上手くて、周りに気を使う礼儀正しいやつだ。
ノリだけでいい場面とそうでないところの使い分けができてる。
だからみんなから好かれてる。
本当、切なくなるほど純粋なんだよなぁ。
エジンバラに着いた。
オープンしている。
このドアの向こうにイクゾーのお母さんがいる。
あの怪物を育て上げた女の人はどんな人なのか…………
いきなりビール瓶で頭カチ割られたらどうしよう。
私の息子をそそのかしやがって!!って。
ていうかイクゾーにお母さんがいるってのがなんかすごい。
ふぅ、と深呼吸をひとつ。
よし!!と意を決してドアを開けた。
「すみませーん………」
「はいー、いらっしゃいませー。お二人様ですか?」
ドアを開けると、そこは綺麗な絨毯が敷かれたゴージャスな店内だった。
カウンターのボトル棚には色んなお酒が整然と並んでおり、出てきた店長さんらしきおじさんはキチンとスーツを着込んでおり、スナックというよりかは少し高級なクラブといった雰囲気だった。
「あ、あの、僕小林◯◯さんを探しているんですが………」
「あぁ、◯◯さんならウチで働いてますけども?でもまだ出勤してないんですよ。21時くらいになったら来るんですけどね。◯◯さんのお知り合い?」
「いや、◯◯さんの息子のイクゾー君の友達でして、◯◯さんに挨拶をしたくて探していたんです。」
「あぁ!!イクゾーのお友達ですか?音楽関係の人?」
「はい、音楽関係の知り合いです。」
「あぁ、そうなんだー!!僕はイクゾーがこんな小さな小学生のころから知ってるからねー。イクゾーが海外に行った時には驚いたよ。何をするのかと思ったらギターなんか持ってねぇ。」
「本当すごいですよね、あいつ。」
店長さんらしきおじさんはイクゾーのことをずっと知っているようだった。
というか小林母子とかなり深いお付き合いをしている方なんだろう。
きっとイクゾーからしたら、なんとかおじさん、みたいなずっと身近にいた大人なんだろうな。
「スミマセン、一緒に写真撮らせてもらっていいですか?イクゾーに送ってやるので。」
「ああ。もちろんいいですよ?イクゾーとはどこで知り合ったんですか?」
「オーストラリアです。」
「へー、オーストラリアで。…………ん?もしかして金丸さん、ってかたですか?」
「はい、金丸です。」
「あー!!はいはい!!あなたが金丸さん!!イクゾーがいつも言ってたんですよ!!金丸さんっていうすごい人がいるって!!俺やりたいことが見つかったって!!あなたが金丸さんなんですねー。」
店を出て、車に乗って沼津に向かった。
富士の飲み屋街は小さいので路上には向いていない。沼津まで行けば路上ができるはずだ。
今回、イクゾーのお母さんには会えなかった。
もう少し待ってれば会えただろうけど、路上はちゃんとやらないといけない。
またいつか縁があれば会えるだろう。
今回のことで、ほんの少しだけイクゾーのことを知ることができた。
どうやら卵から生まれて、洞窟で生活して、天涯孤独に生きてきた、というわけではなさそうだ。
あいつにも故郷があり、親がおり、友達がいて、歴史がある。
人並みに愛を注がれてきている。
イクゾー。
また遊ぼうぜ。
釧路は遠いよ。
また旅しようぜ。
あのころみたいに。