2015年2月20日(火曜日)
【大阪府】 大阪市 ~ 【滋賀県】 甲南町
お世話になった友達にお礼を言ってアパートを出て、バスに乗って大阪駅に向かった。
梅田の高層ビル群の乱立ぶりにはいつもど肝を抜かれる迫力がある。
高速の高架と一方通行の幹線道路が交差し、ビルの隙間の空中をジェットコースターのようにバスは滑っていき、大阪駅に到着した。
人々がめまぐるしく行き交う大阪駅はあまりに巨大な迷路で、自分が乗りたい一本の電車を探し出すのは至難の技なのだが、外国のターミナルでわけのわからない文字を見ながら勘で電車やバスを探し出していたことは確かに経験値となっている。
すぐにJRのホームを見つけ出し、電光掲示板から滋賀行きの電車を見つけた。
順番待ちのラインに行儀よく従っている人々の後ろに並び電車に乗り込んだ。
人でごった返す車内で大きな荷物を持っているのはなかなか心苦しいもので、大阪から離れればそのうち空いてくるだろうと思っていたのだが、さすがに都会のJRは人があまり途切れない。
京都、山科、石山、どこでも人がどやどや降りてはどやどやと乗り込んできて、俺のギターが人々の通行を邪魔している。マジごめんなさい。
草津の駅に到着し、柘植行きの路線に乗り換えると一気に乗客が減り、地元の高校生などの姿が増えた。
窓の外は田園風景が広がるようになり、その間に古い瓦屋根の集落が寄り添っている。
田舎ではあるが、京都に近く、歴史の深い県である滋賀は、こうした枯野の寂しさにもどことなく品があるように思えてくる。
電車の中にお婆さんが乗り込んでくると、それまでスマホをいじっていたおじさんがさっと席を立ってお婆さんに譲った。
お婆さんの、ありがとうございます、のイントネーションは柔らかい京都の訛りだ。
客席に空きが目立ち始めたころ、甲南の駅に着いた。
自動改札ではなく、駅員さんに切符を渡して外に出るとそこには木造の民家が並ぶひなびた集落がある。
田舎のお婆ちゃんの家とはこういうところにあるといった静かな町並みで、軒下の昭和時代の看板が錆びついて文字が読めなくなっている。
親戚でもいなければ絶対にこないような、どこにでもある田舎の集落。
本当になんの縁だったのか、ずっと昔にこの集落にあった小さなカフェでライブをしたことがある。
カフェというかライブハウスというかなんなのか、外から丸見えのガラス戸の中、民家の玄関の土間でやったミニライブ。
あの頃は歌える場所があったらどこででもやっていたし、こうしたおよそ何かの出会いがなければただ通り過ぎるだけのような町に潜り込めることが旅の快感であることは、あの頃からすでに心の中にあった。
何もない何もないと言ってはいるが、この甲南には全国に誇る素晴らしい観光地が、あることにはある。
そう、はじめはその観光地を見るためにこの甲南に立ち寄ったのだ。
甲南といえば!!
そう!!!
誰でもご存知!!!!
忍者屋敷!!!!!
いやー、すごい。即世界遺産に登録して欲しいですね。甲南の小学校では手裏剣を投げる授業があるそうです。嘘です。
忍者屋敷を知らねえええ!!???
なんだとおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!
伊賀忍者におされて目立たない超地味な甲賀忍術軍団の本拠地、甲賀の忍者の里を知らなくてマチュピチュとか言ってんじゃねぇぞこのアルパカが!!!
忍者うどん食わせてやらねぇぞ!!!!
はああああああああ!!!!
忍者うどんを知らない!!??
あの一見麺しか入っていないように見えて実は丼の底に具材が隠れているというこれでもかというほど忍者の性質をよく表している斬新かつトラディショナルスタイル忍者うどんとか誰も知らないですよね。
美味しいですよ。普通のうどんだけど。僕は好きです。
伊賀は有名です。
松尾芭蕉ゆかりの地だったり上野城があったり、組紐や田楽があったりして大きな観光地として人気があります。
なので伊賀忍者も有名です。
しかし甲賀は違います。
ひっそりしてます。
田舎でひっそりと農民として暮らし、いざ有事となれば一流の忍びとなり、戦の裏で暗躍していたのです。
そう忍は表に出てはいけない。
そういうわけでこうしたのどかな田畑の里で正体を隠して暮らしていたのです。
なので甲賀忍者屋敷は涙がちょちょ切れるほどマイナーな観光地なんです。
でも僕は好きですけどね。
忍者が案内してくれます。
「えー、こちらがかつての忍者が住んでいた民家となりますー。」
「へー、そうなんですねー、うわーなんかドキドキします、しま………あれ?お兄さん?」
今まで目の前で案内してくれていたお兄さんが2秒で消えます。
え?!え!?と思っていたら壁がくるりんとひっくり返って出てきます。
彼らはこうして敵から姿を隠していたのです。
世界広しといえどもこれほど鮮やかに姿を消せるのはヨルダンで僕のギターをこっそり盗んで車の陰に隠れていたあの鼻ヒゲくらいのものでしょう。
マキビシとか買えます。
楽しいですよ。
さて、そんな思い出深い甲南の里。
冷たい風が平野を吹き抜ける町に冬晴れの太陽が清らかに降り注いでいる。
集落を散歩し、ずいぶんと久しぶりの友達と再会した。
「金丸くんー!甲南には寄ってくれへんかと思ってたー!」
駅前に迎えに来てくれたのはみゆきさん。
車の後ろにはベビーが乗っていた。
みゆきさんの車に乗って、見覚えのある道を走り、何度もお邪魔したお宅に着いた。
家の中はすっかり子供仕様になってオモチャがたくさん溢れていた。
「ご飯何にしようか思ったんやけどスキヤキでええねんな?」
しばらくして仕事を終えた旦那さんの直也さんも帰ってきた。
あまりにも久しぶりの再会に大声を出して喜ぶと、ベビーもテンションが上がって家の中を駆け回った。
初めて2人に会ったのは、甲南の集落でやった土間ライブだった。
あれから2人はいつも僕のライブに来てくれ、遠い時は宮崎にまで足を運んでくれる時もあった。
まだトゲのあるギラギラした町田町蔵みたいだった直也さんと、料理が超絶上手なみゆきさん。
いつも自由に旅行に出かけていた素敵な2人とずいぶん仲良くさせてもらい、僕のことをなんでも知ってくれている。
ずっとずっと、まだ最初の日本一周のころから僕のことを応援してくれている。
僕の新曲をいつもリアルタイムで聴いてくれ、いつも色んなアドバイスをもらっていた。
あの直也さんとみゆきさんにまた会えた。
「いやー、ホンマに世界一周したきたとは思えへんわー!」
みゆきさんの美味しいこだわり野菜のスキヤキを食べながら色んな話をした。
ビールを飲んで、たくさん笑った。
旅に出て多くの知り合いや友達ができ、新しい出会いは古い記憶を上塗りしていくものでは確かにある。
旅中にiPhoneをなくして、もう連絡先がわからなくて途絶えてしまった人もたくさんいる。
それは仕方ないことだと思う。
でも大事な人とは決して切れることはない。
何にもなかった若いころの僕をずっと応援してきてくれた人たちに今回どれだけ元気な顔を見せられるか。それが一番大事なこと。
初めてこの甲賀に来た時、出会った人と飲んだ。その人はこう言っていた。
「甲賀の人間は風の音でも目が覚めるんや。寝ている時でも眠りが浅くて気配を感じ取ることができるんやで。」
俺は忍者の末裔じゃない。
美味しいスキヤキとビールとお風呂をいただいて布団に入ったら、そこからどんな音がしても目を覚まさず熟睡した。
『ライブ情報』
とっても暖かい自由なライブです。
どなたでもお気軽に遊びに来てください。
そしてお時間ありましたら飲みましょう!
また宮崎の焼酎持って行こ!!
【2月28日】(土)
open 19:00
start 19:30
charge 2000円(ドリンク別)
出演 IKKYU chili 金丸文武 【ゲスト】天羽柚月
場所:東京 三軒茶屋
ライブバー四軒茶屋ホームページ
実力派シンガーのイッキュー君とchiliさん。
そして天羽さんは「日本一下手な歌手」として紅白出場を目指すシンガー。
身体障害を持っており、その壮絶な人生をそのまま曲にした歌には半端じゃない力があります。僕はまだ動画でしか観たことありませんが、きっと生はヤバイだろうなと思います。
かなりディープな夜になりそうな予感です!
【3月1日】(日)
開場 18時30分
開演 19時00分
出演 金丸文武、川田ようすけ
料金 2,000円(ドリンク別)
場所 : 東京 三軒茶屋
ライブバー四軒茶屋ホームページ
大好きな尊敬するシンガーソングライター、川田君とのツーマン。
パリのサプライズで僕の旅にも登場してくれた川田君とこうして正式に対バンするのは彼と初めて会った時以来じゃないかな。
この日は2人でお互いの曲もやってみよう!という話になっていますので、僕もめちゃ楽しみです!!
【3月3日】(火曜日)
『地球探検隊 旅パ!』
受け付け開始 19:00
ラストオーダー 22:00
料金 2000円(ワンドリンク+軽食)
場所 Polder Cafe 新宿店
個性的でワクワクするような旅を企画する旅行会社をやってらっしゃるカッコいいおじさま、中村隊長の主催するイベントです。
旅好きが集まるカフェで歌わせてもらいます!
あ、この地球探検隊のイベントは予約制となりますので、リンクのページから予約フォームに記入をよろしくお願いいたします!