7月30日 水曜日
【インド】 コルカタ
朝、チェックアウトのために荷物をまとめていると誰かが部屋のドアをノックした。
お、来たかな、とドアを開けると、そこにはカンボジアで一緒にアンコールワットに行った中国人のハンが心細い顔をして立っていた。
俺を見た途端、明るい表情になるハン。
「フミさんー!インド怖いですー。」
今日の朝にインドに到着するとメールをくれていたハン。
先にインド入りしていた俺に、インドはどう?危ない?汚い?ご飯は大丈夫?とビビりまくりながらメールを送ってきていた。
ここのホテルも昨日教えておいたのだ。
さすが慎重な中国人。
インドほど未知な国はないもんな。
他に3人いた友達はみんなアジアから中国に帰ったみたいで、あのメンバーで1番アグレッシブだったハンだけがインドにやってきた。
これからインドを回ってネパールに行き、そこからバスでチベットを抜けて中国に帰るそう。
それが1番安い帰り道なんだそうた。
チベットに入るために10万円以上のツアーを組まないといけない日本人に比べて中国人は自由に出入りできるんだな。
表のカフェでハンとお茶をして、それから1人で中国入りの準備。
まずは今夜、路上を終えた後にバスで空港へと行かないといけないが、このグチャグチャの街の中で空港行きのバスを探し出すのはかなりリスクがある。
昼にうちにバス停の場所を確認しておかないと怖い。
雨が降りしきる中、ズタボロの街を歩き、水たまりが池みたいになってるのを避けながらバス停を目指す。
誰に聞いてもあまりハッキリした答えは返ってこないが、20分ほど歩い頃にようやくボロボロの屋台通りの隙間に小さな発着場を見つけた。
こんなんゼッテーわかんねぇよ。
この汚い道を荷物全部担いで歩くのかと思うとかなり面倒くさい。
タクシーならもちろんめちゃくちゃ楽なんだけど値段は根性で値切ったとしても250ルピーだそう。
だいたい300ルピーが相場。500円だ。
誰か仲間がいれば代金をワリカンできるんだけど、1人で500円は今の懐ではなかなか痛い。
エアポートバスはどうやらエアコン付きのインドには似つかわしくない新しいもので、お金持ちや観光客が乗るようなバスだ。
値段は60ルピーとのこと。1ドル。
頑張って節約してバスで行くか。
次に写真屋さんを探す。
明日の朝に中国に入るが、俺はビザは持っていない。
アライバルビザを中国の空港で取得するつもりだ。
なのでインドの時のように色々と準備しておかないといけないはず。
アライバルビザのために何を用意しておくべきなのか調べたいんだけど、なにせ中国の情報は少ない。
バッグパッカーもほとんど行かないし、行く人もたいがいは事前にビザを取得しているので、アライバルビザの情報が見つからない。
なのである程度慎重に色々準備してきた。
中国から台湾へ抜ける飛行機チケットも買ったし、中国での滞在先のホテルの住所もひかえている。
そして証明写真も撮っておこう。
この前インドのために撮った証明写真は財布を盗まれた時に一緒にとられた。
また写真屋さんに行くのは面倒くさいけど、ここは最善を尽くしておこう。
中国は世界一周で1番行きたかった国。
確実に入国して楽しんでやる。
ズタボロの廃墟みたいなカメラ屋さんで2秒で写真を作ってもらった。
パソコンで画像の修正をして、肌をきれいにしてくれたりと意外なサービスをしてくれてたったの60ルピー。1ドル。
安すぎ。
これで中国のアライバルビザは完璧、なはず。
あとは申請代が1700円とのことなので、今日頑張って最低でもそれは稼いでしまうぞ。
インド最後の路上だ。
慣れ親しんだパークストリート。
歩いていると物売りのおじさんたちがハーイと笑顔で手を上げてくる。
レストランやバーの店員さん、チャイ屋の爺さん、そして通行人も、みんな声をかけてくれる。
中にはまったく知らない人から、あ!あなた歌ってる人!?あなたの動画をFacebookで見たわ!!と言ってくれる人も。
路上を撮影した人がFacebookにこんなやつがいたぜーって投稿したんだな。
いつもの場所で路上開始。
喉は相変わらずヒドイが今日がラスト。
明日は移動日だから1日は喉を休ませることがでる。
中国が稼げるかはまだわからない。
でもアジアに入ってからの中国人たちのフレンドリーさと優しさは半端じゃなかった。
あの反応は親日と言ってもいいほどだ。
きっと稼げる。
そう願う。
だから今日は喉が潰れるまでやってやるぞ。
今日も雨が降っており、湿気と熱気で汗がとめどなく噴き出てくる。
頭クラクラしながら歌っていると、足元に置いているお水がなくなったのを見計らって観客の誰かが冷たい水を買ってきてくれる。
ペットボトルを首や顔に押し当てると、ジュッと音がしそうなくらいに体が茹で上がっている。
インド、暑かったなぁ。最後まで暑すぎたよ。
こんなにぶっ倒れそうになりながら路上したのはアメリカの南部くらいだ。
あの時はカッピーとユージン君と3人でデカいカップにしこたま氷とコーラをぶち込んで歌ってたなぁ。
多分1番コーラを飲んだ国だろうな。
もはや懐かしい。あのアメリカの寂しげな風。
休憩を挟みながら3時間。
19時を過ぎた頃にギターを置いた。
たくさんの拍手が起き、人だかりの中にハンの姿もあった。
お世話になったレストランのおじさんに別れを告げ、パークストリートを後にする。
ていうか俺、宿とパークストリートの往復しかしてねぇ(´Д` )
コルカタって何があるんだ(´Д` )
宿に戻ってハンの部屋に置かせてもらっていた荷物を取り、それからいつものカフェへ。
気になるインド最後のあがりは……
1760ルピー。
ドル換算で30ドル。
そしてこの数日で必死こいて貯めたすべてのお金を換金屋さんでドルに換金。
電車の中で全財産を盗まれて、コルカタに着いてからボロボロの体で根性で歌い、なんとか作ることができた俺の全財産は、
80ドル。
がんばった……………
これだけあればしばらくなんとかなるだろう。
さらにアジアで歌ってる時に中国人観光客からナンボかの元をもらっている。50元くらいある。
ハンに見せると、10元あればチャーハン、25元出せば贅沢なものが食べられるよと教えてくれた。
うおお、憧れ続けた中国。ついにあの中国に向かう。
四川出身のハンから色んなことを教えてもらったけど、聞けば聞くほど中国が楽しみになっていく。
なんて魅力的な国なんだ。
最高の旅にしてやるぞ。
ハン、本当に会えて良かった。
ありがとう。ハンの国をキッチリ見てくるから。
またいつか日本にも来てくれよ!!
荷物を担いでボロボロの街を歩く。
夜の街はにぶく街灯が光り、相変わらずけたまましくクラクションを鳴らしながら車とバイクとトゥクトゥクがぶっ飛ばしている。
その隙間をフラフラと歩くゾンビみたいなインド人たち。
ゴミを積み上げた隙間で何か謎の食べ物を売ってる人、何か叫んでる人、暗がりで死んだように寝てる人。
今インドにまた戻ってきたいか?と聞かれたら、食い気味で嫌ですと答える。
戻っ、のあたりで、うわあああ!!!思い出したくない!!って泣き出すかもしれない。
いやー、強烈な国だった…………
きっと10年くらいしたら、人間てのはバカなもんで、この強烈な経験が美化されてまた行ってみようかな……?って血迷ったことを考えるかもしれない。
その時の自分を全力でぶん殴りたいですね。
インドにだけは行くなこのやろう!!って怒鳴りたいです。
でも、わかんないな。
あまりにも強烈だったから、また経験してみたくなるかも。
怖いものみたさで。
今思えば悪くはなかったかな。
財布を盗まれたのはもうしょうがない。
これは俺の不注意だし、別にこのことがマイナスイメージにはならない。
クラクションは最悪だけど。
割り込みも。
臭いのも、汚いのも、嘘も、顔も。顔はごめん。
たった2週間だったけど、俺なりにインドを感じることはできた。
ここはこの世のカオスの中心だ。渦のど真ん中で人々は生と死とゴミにまみれて暮らしている。
うん、今は語るまい。
インドを語ったらウザい旅人でしかない。
悪くなかったよ。インド人も愛すべき性格なのかもね!!
というわけてバスの発着場に到着。
オッさんが近づいてくる。
「もうバスは終わったぜ!!ところでチャイを飲みたいから5ルピーくれ!!」
死ね!!って言いかけたけどどうせインドルピーを余らせてもしょうがないから2人でチャイを飲みながらお喋りっていうかバスが終わったってどういうことだコノヤロウ!!!
「21時で終わりなんだよ。もう15分過ぎてる。ワッツユアネーム?」
「タクシータクシー!!ハウアーユーカントリー?」
「ハウアーユーカントリーってなんだよ、日本だよ日本。タクシーはいらん。」
「ノーバス!!ノー!!タクシーオンリー!!500ルピー!!」
死ね!!って言いかけたけど、最後なのでそんなにひどいことは言わんとこうと、優しく答える。
「もうインドのお金100ルピーしか持ってないんですよ。100ルピーで行ってください。お願いします。もうバスはないんですよね。お願いします。」
「あーはいはい、あそこ、そこ曲がったとこにバス停があるからそこ行きな。」
だからもうバスはないって嘘をついたすぐ後に言葉をくつがすな。そして俺いいことしてやったみたいな顔をするな。
というわけで言われた通りに歩いて行くとバス停発見。
空港行きのオンボロバスに乗り込むと乗客は誰もいない。俺だけ。
ガラーンとした薄暗い車内に座る俺。
するとバスの集金係の濃くまろがやってきて俺の隣に座る。
ニヤニヤした顔で何か言っている。
英語がまったく喋れないが、バス代を払えと言ってるようだ。
「いくらですか?」
「ジャワ、バーモント、ジャワ。」
指を2本立ててピースしてくる。
20ルピーね。34円。
まぁ外国人用のエアコンバスが60ルピーだったのでこのズタボロバスならそんなもんだろうな。
20ルピーを渡そうとすると、違う違うと言う。
まさかと思って2のあとに0をふたつ書いてみた。
そうだとうなづく濃くまろ。
死ね!!と言いかけたけど、最後なので優しくしようと、50ルピーくらいだろ?とたずねると、ニヤニヤしながら200だと繰り返す。
なんで綺麗なエアコンバスの3倍もするんだよと思っていると、バスのエンジンがかけられ動き出した。
仕方ない!!もう大サービス!!100ルピーでいいよ!!とニヤニヤした顔で言ってくる濃くまろ。
だからなんで市バスの値段がいきなり半額になるんだよボケがと思いながら、そこからは無視。
今バスの中に誰もいないから好きなことを言ってるんだろう。
他の乗客が乗ってきてから払おうと濃くまろを無視するが、濃くまろも焦って俺の肩を叩いてくる。
おい、ボッタクるならせめて英語くらい喋れ。
しばらくしてから他の乗客たちがわらわら乗ってきて、バスの中は満席になった。
お金を回収して回っている濃くまろ。
俺の席に来て、隣のおっちゃんたちからお金をもらっていく濃くまろ。
しかし俺には何も言わずに通り過ぎて行きやがった。
「おーい!!お金!!いくらだよ!!いくらだー!!」
手のひらを出して、後で後でという仕草をする濃くまろ。
1分前に200ルピーって言ってたのに本当の金額を言えないんだろう。
他の乗客もいるし。バカすぎる。
それでも、おい!!いくらだよ!!と気まずそうにしている濃くまろに叫んでいると、隣のおっちゃんが衝撃の言葉を発した。
「空港か?8ルピーだよ。」
濃くまろコッノヤロウ!!!!!
8ルピーを200ルピーとはよくぞ言いやがったな!!!あああんん!!??
それからも俺の前を通るたびに8ルピーを払おうとするが、後で後でと受け取らない。
もうこうなったら降りる時になんて言うか楽しみになってきて、空港まで待った。
バスは40分くらいしてただの道端に止まった。
ここまで来ると乗客はほとんどいない。
空港どこだよ?と聞くと、向こうだと指さす濃くまろ。
ターミナルの前まで行くんじゃねぇのかよ。空港内ってめちゃくちゃ広いのにここから歩いて行かないといけない。
面倒くせぇなぁと思いながら、10ルピー札を渡そうとすると、何だこれは?と強気な態度に出てきた。
すでにお客さんはほとんど降りていて、俺と隣のおっちゃんしかいない。
これを待ってたとばかりに張り切る濃くまろ。
もう1人料金回収のオッさんがいたんだけど、2人して俺を取り囲みバスから降りられないようにしてくる。
そして荷物を指差して100ルピー100ルピー!!と叫んでいる。
降りようとしていた隣のおっちゃんを呼び止めてもう一度バス代っていくらですか?と尋ねると、8ルピーだよと言うおっちゃん。
しかし濃くまろたちは荷物があるから100ルピーだ!!と叫んでいる。
「俺が8ルピー、バッグが92ルピーなんですか?」
「そうだ!!早く払え!!」
隣のおっちゃんはこの濃くまろたちの横暴を見てヤレヤレといった顔でバスを降りて行った。
「わかったよ、荷物は確かに大きいからね2人分払うよ。はい、16ルピー。」
「違う100ルピーだ!!早くしろ!!飛行機に間に合わんぞ!!」
「まだ3時間あるから余裕だよ。人が8ルピーなのにバッグが92ルピーっておかしくない?」
「早くしろ!!早くしろ!!」
「死ねボケ!!!」
濃くまろを押しのけてバッグをつかんでバスを降り、降り際に10ルピー札をくしゃくしゃに丸めてバスの中に投げ捨てた。
歩いて行く俺をバスの中から大声で罵っているバカ。
本当、最初から最後までインド人はインド人だわ。
道に迷って空港の敷地内を汗だくでさまよい、タクシーに300ルピーでターミナルまで行くぜ!!って言われて、なんで街から空港までが250ルピーなのに同じ敷地内でそんな値段するんだよと笑いながらなんとかターミナルまで歩いてやってきた。
着いてすぐにバッグを開き、重たいものを取り出して重量を調整。
預け荷物20kgマックスのところを18kgでクリアーして、ギターは機内に持ち込めませんよなんてことも言われず、余裕でチェックイン完了。
イミグレーションの出国手続きも2秒で終わってあとは飛行機に乗るだけ。
バスが意外に安かったので余ったルピーでカフェに行き1番高いモカラテを注文。
1番高いと言っても80ルピーだけど。130円。
喫煙ブースでインドのまずいタバコを吸いながら心を落ち着ける。
狭いブースの中には中国人たちがタバコを吸っている。
中国語で喋っているが、もちろんまったくわからない。
中国は世界でもトップレベルに英語が通じない国と聞いている。
そしてハンに聞いたところ、中国には観光地にあるような小さな両替屋さんがなく、銀行でしか外貨の換金かできないという。
日本もそうだ。
換金屋さんなんてない。
今まで訪れてきた国々が外国からの観光客相手のビジネスに力を入れていただけで、中国や日本みたいに自国の国内だけで観光も成り立てるような国はよほど珍しい。
きっと様々なシステムが変わるだろう。
どうなってしまうだろう。
日付が変わって夜中の1時前。
飛行機に乗り込んでシートベルトをしめる。
さぁ、ついに中国だ。
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【インド】 コルカタ
朝、チェックアウトのために荷物をまとめていると誰かが部屋のドアをノックした。
お、来たかな、とドアを開けると、そこにはカンボジアで一緒にアンコールワットに行った中国人のハンが心細い顔をして立っていた。
俺を見た途端、明るい表情になるハン。
「フミさんー!インド怖いですー。」
今日の朝にインドに到着するとメールをくれていたハン。
先にインド入りしていた俺に、インドはどう?危ない?汚い?ご飯は大丈夫?とビビりまくりながらメールを送ってきていた。
ここのホテルも昨日教えておいたのだ。
さすが慎重な中国人。
インドほど未知な国はないもんな。
他に3人いた友達はみんなアジアから中国に帰ったみたいで、あのメンバーで1番アグレッシブだったハンだけがインドにやってきた。
これからインドを回ってネパールに行き、そこからバスでチベットを抜けて中国に帰るそう。
それが1番安い帰り道なんだそうた。
チベットに入るために10万円以上のツアーを組まないといけない日本人に比べて中国人は自由に出入りできるんだな。
表のカフェでハンとお茶をして、それから1人で中国入りの準備。
まずは今夜、路上を終えた後にバスで空港へと行かないといけないが、このグチャグチャの街の中で空港行きのバスを探し出すのはかなりリスクがある。
昼にうちにバス停の場所を確認しておかないと怖い。
雨が降りしきる中、ズタボロの街を歩き、水たまりが池みたいになってるのを避けながらバス停を目指す。
誰に聞いてもあまりハッキリした答えは返ってこないが、20分ほど歩い頃にようやくボロボロの屋台通りの隙間に小さな発着場を見つけた。
こんなんゼッテーわかんねぇよ。
この汚い道を荷物全部担いで歩くのかと思うとかなり面倒くさい。
タクシーならもちろんめちゃくちゃ楽なんだけど値段は根性で値切ったとしても250ルピーだそう。
だいたい300ルピーが相場。500円だ。
誰か仲間がいれば代金をワリカンできるんだけど、1人で500円は今の懐ではなかなか痛い。
エアポートバスはどうやらエアコン付きのインドには似つかわしくない新しいもので、お金持ちや観光客が乗るようなバスだ。
値段は60ルピーとのこと。1ドル。
頑張って節約してバスで行くか。
次に写真屋さんを探す。
明日の朝に中国に入るが、俺はビザは持っていない。
アライバルビザを中国の空港で取得するつもりだ。
なのでインドの時のように色々と準備しておかないといけないはず。
アライバルビザのために何を用意しておくべきなのか調べたいんだけど、なにせ中国の情報は少ない。
バッグパッカーもほとんど行かないし、行く人もたいがいは事前にビザを取得しているので、アライバルビザの情報が見つからない。
なのである程度慎重に色々準備してきた。
中国から台湾へ抜ける飛行機チケットも買ったし、中国での滞在先のホテルの住所もひかえている。
そして証明写真も撮っておこう。
この前インドのために撮った証明写真は財布を盗まれた時に一緒にとられた。
また写真屋さんに行くのは面倒くさいけど、ここは最善を尽くしておこう。
中国は世界一周で1番行きたかった国。
確実に入国して楽しんでやる。
ズタボロの廃墟みたいなカメラ屋さんで2秒で写真を作ってもらった。
パソコンで画像の修正をして、肌をきれいにしてくれたりと意外なサービスをしてくれてたったの60ルピー。1ドル。
安すぎ。
これで中国のアライバルビザは完璧、なはず。
あとは申請代が1700円とのことなので、今日頑張って最低でもそれは稼いでしまうぞ。
インド最後の路上だ。
慣れ親しんだパークストリート。
歩いていると物売りのおじさんたちがハーイと笑顔で手を上げてくる。
レストランやバーの店員さん、チャイ屋の爺さん、そして通行人も、みんな声をかけてくれる。
中にはまったく知らない人から、あ!あなた歌ってる人!?あなたの動画をFacebookで見たわ!!と言ってくれる人も。
路上を撮影した人がFacebookにこんなやつがいたぜーって投稿したんだな。
いつもの場所で路上開始。
喉は相変わらずヒドイが今日がラスト。
明日は移動日だから1日は喉を休ませることがでる。
中国が稼げるかはまだわからない。
でもアジアに入ってからの中国人たちのフレンドリーさと優しさは半端じゃなかった。
あの反応は親日と言ってもいいほどだ。
きっと稼げる。
そう願う。
だから今日は喉が潰れるまでやってやるぞ。
今日も雨が降っており、湿気と熱気で汗がとめどなく噴き出てくる。
頭クラクラしながら歌っていると、足元に置いているお水がなくなったのを見計らって観客の誰かが冷たい水を買ってきてくれる。
ペットボトルを首や顔に押し当てると、ジュッと音がしそうなくらいに体が茹で上がっている。
インド、暑かったなぁ。最後まで暑すぎたよ。
こんなにぶっ倒れそうになりながら路上したのはアメリカの南部くらいだ。
あの時はカッピーとユージン君と3人でデカいカップにしこたま氷とコーラをぶち込んで歌ってたなぁ。
多分1番コーラを飲んだ国だろうな。
もはや懐かしい。あのアメリカの寂しげな風。
休憩を挟みながら3時間。
19時を過ぎた頃にギターを置いた。
たくさんの拍手が起き、人だかりの中にハンの姿もあった。
お世話になったレストランのおじさんに別れを告げ、パークストリートを後にする。
ていうか俺、宿とパークストリートの往復しかしてねぇ(´Д` )
コルカタって何があるんだ(´Д` )
宿に戻ってハンの部屋に置かせてもらっていた荷物を取り、それからいつものカフェへ。
気になるインド最後のあがりは……
1760ルピー。
ドル換算で30ドル。
そしてこの数日で必死こいて貯めたすべてのお金を換金屋さんでドルに換金。
電車の中で全財産を盗まれて、コルカタに着いてからボロボロの体で根性で歌い、なんとか作ることができた俺の全財産は、
80ドル。
がんばった……………
これだけあればしばらくなんとかなるだろう。
さらにアジアで歌ってる時に中国人観光客からナンボかの元をもらっている。50元くらいある。
ハンに見せると、10元あればチャーハン、25元出せば贅沢なものが食べられるよと教えてくれた。
うおお、憧れ続けた中国。ついにあの中国に向かう。
四川出身のハンから色んなことを教えてもらったけど、聞けば聞くほど中国が楽しみになっていく。
なんて魅力的な国なんだ。
最高の旅にしてやるぞ。
ハン、本当に会えて良かった。
ありがとう。ハンの国をキッチリ見てくるから。
またいつか日本にも来てくれよ!!
荷物を担いでボロボロの街を歩く。
夜の街はにぶく街灯が光り、相変わらずけたまましくクラクションを鳴らしながら車とバイクとトゥクトゥクがぶっ飛ばしている。
その隙間をフラフラと歩くゾンビみたいなインド人たち。
ゴミを積み上げた隙間で何か謎の食べ物を売ってる人、何か叫んでる人、暗がりで死んだように寝てる人。
今インドにまた戻ってきたいか?と聞かれたら、食い気味で嫌ですと答える。
戻っ、のあたりで、うわあああ!!!思い出したくない!!って泣き出すかもしれない。
いやー、強烈な国だった…………
きっと10年くらいしたら、人間てのはバカなもんで、この強烈な経験が美化されてまた行ってみようかな……?って血迷ったことを考えるかもしれない。
その時の自分を全力でぶん殴りたいですね。
インドにだけは行くなこのやろう!!って怒鳴りたいです。
でも、わかんないな。
あまりにも強烈だったから、また経験してみたくなるかも。
怖いものみたさで。
今思えば悪くはなかったかな。
財布を盗まれたのはもうしょうがない。
これは俺の不注意だし、別にこのことがマイナスイメージにはならない。
クラクションは最悪だけど。
割り込みも。
臭いのも、汚いのも、嘘も、顔も。顔はごめん。
たった2週間だったけど、俺なりにインドを感じることはできた。
ここはこの世のカオスの中心だ。渦のど真ん中で人々は生と死とゴミにまみれて暮らしている。
うん、今は語るまい。
インドを語ったらウザい旅人でしかない。
悪くなかったよ。インド人も愛すべき性格なのかもね!!
というわけてバスの発着場に到着。
オッさんが近づいてくる。
「もうバスは終わったぜ!!ところでチャイを飲みたいから5ルピーくれ!!」
死ね!!って言いかけたけどどうせインドルピーを余らせてもしょうがないから2人でチャイを飲みながらお喋りっていうかバスが終わったってどういうことだコノヤロウ!!!
「21時で終わりなんだよ。もう15分過ぎてる。ワッツユアネーム?」
「タクシータクシー!!ハウアーユーカントリー?」
「ハウアーユーカントリーってなんだよ、日本だよ日本。タクシーはいらん。」
「ノーバス!!ノー!!タクシーオンリー!!500ルピー!!」
死ね!!って言いかけたけど、最後なのでそんなにひどいことは言わんとこうと、優しく答える。
「もうインドのお金100ルピーしか持ってないんですよ。100ルピーで行ってください。お願いします。もうバスはないんですよね。お願いします。」
「あーはいはい、あそこ、そこ曲がったとこにバス停があるからそこ行きな。」
だからもうバスはないって嘘をついたすぐ後に言葉をくつがすな。そして俺いいことしてやったみたいな顔をするな。
というわけで言われた通りに歩いて行くとバス停発見。
空港行きのオンボロバスに乗り込むと乗客は誰もいない。俺だけ。
ガラーンとした薄暗い車内に座る俺。
するとバスの集金係の濃くまろがやってきて俺の隣に座る。
ニヤニヤした顔で何か言っている。
英語がまったく喋れないが、バス代を払えと言ってるようだ。
「いくらですか?」
「ジャワ、バーモント、ジャワ。」
指を2本立ててピースしてくる。
20ルピーね。34円。
まぁ外国人用のエアコンバスが60ルピーだったのでこのズタボロバスならそんなもんだろうな。
20ルピーを渡そうとすると、違う違うと言う。
まさかと思って2のあとに0をふたつ書いてみた。
そうだとうなづく濃くまろ。
死ね!!と言いかけたけど、最後なので優しくしようと、50ルピーくらいだろ?とたずねると、ニヤニヤしながら200だと繰り返す。
なんで綺麗なエアコンバスの3倍もするんだよと思っていると、バスのエンジンがかけられ動き出した。
仕方ない!!もう大サービス!!100ルピーでいいよ!!とニヤニヤした顔で言ってくる濃くまろ。
だからなんで市バスの値段がいきなり半額になるんだよボケがと思いながら、そこからは無視。
今バスの中に誰もいないから好きなことを言ってるんだろう。
他の乗客が乗ってきてから払おうと濃くまろを無視するが、濃くまろも焦って俺の肩を叩いてくる。
おい、ボッタクるならせめて英語くらい喋れ。
しばらくしてから他の乗客たちがわらわら乗ってきて、バスの中は満席になった。
お金を回収して回っている濃くまろ。
俺の席に来て、隣のおっちゃんたちからお金をもらっていく濃くまろ。
しかし俺には何も言わずに通り過ぎて行きやがった。
「おーい!!お金!!いくらだよ!!いくらだー!!」
手のひらを出して、後で後でという仕草をする濃くまろ。
1分前に200ルピーって言ってたのに本当の金額を言えないんだろう。
他の乗客もいるし。バカすぎる。
それでも、おい!!いくらだよ!!と気まずそうにしている濃くまろに叫んでいると、隣のおっちゃんが衝撃の言葉を発した。
「空港か?8ルピーだよ。」
濃くまろコッノヤロウ!!!!!
8ルピーを200ルピーとはよくぞ言いやがったな!!!あああんん!!??
それからも俺の前を通るたびに8ルピーを払おうとするが、後で後でと受け取らない。
もうこうなったら降りる時になんて言うか楽しみになってきて、空港まで待った。
バスは40分くらいしてただの道端に止まった。
ここまで来ると乗客はほとんどいない。
空港どこだよ?と聞くと、向こうだと指さす濃くまろ。
ターミナルの前まで行くんじゃねぇのかよ。空港内ってめちゃくちゃ広いのにここから歩いて行かないといけない。
面倒くせぇなぁと思いながら、10ルピー札を渡そうとすると、何だこれは?と強気な態度に出てきた。
すでにお客さんはほとんど降りていて、俺と隣のおっちゃんしかいない。
これを待ってたとばかりに張り切る濃くまろ。
もう1人料金回収のオッさんがいたんだけど、2人して俺を取り囲みバスから降りられないようにしてくる。
そして荷物を指差して100ルピー100ルピー!!と叫んでいる。
降りようとしていた隣のおっちゃんを呼び止めてもう一度バス代っていくらですか?と尋ねると、8ルピーだよと言うおっちゃん。
しかし濃くまろたちは荷物があるから100ルピーだ!!と叫んでいる。
「俺が8ルピー、バッグが92ルピーなんですか?」
「そうだ!!早く払え!!」
隣のおっちゃんはこの濃くまろたちの横暴を見てヤレヤレといった顔でバスを降りて行った。
「わかったよ、荷物は確かに大きいからね2人分払うよ。はい、16ルピー。」
「違う100ルピーだ!!早くしろ!!飛行機に間に合わんぞ!!」
「まだ3時間あるから余裕だよ。人が8ルピーなのにバッグが92ルピーっておかしくない?」
「早くしろ!!早くしろ!!」
「死ねボケ!!!」
濃くまろを押しのけてバッグをつかんでバスを降り、降り際に10ルピー札をくしゃくしゃに丸めてバスの中に投げ捨てた。
歩いて行く俺をバスの中から大声で罵っているバカ。
本当、最初から最後までインド人はインド人だわ。
道に迷って空港の敷地内を汗だくでさまよい、タクシーに300ルピーでターミナルまで行くぜ!!って言われて、なんで街から空港までが250ルピーなのに同じ敷地内でそんな値段するんだよと笑いながらなんとかターミナルまで歩いてやってきた。
着いてすぐにバッグを開き、重たいものを取り出して重量を調整。
預け荷物20kgマックスのところを18kgでクリアーして、ギターは機内に持ち込めませんよなんてことも言われず、余裕でチェックイン完了。
イミグレーションの出国手続きも2秒で終わってあとは飛行機に乗るだけ。
バスが意外に安かったので余ったルピーでカフェに行き1番高いモカラテを注文。
1番高いと言っても80ルピーだけど。130円。
喫煙ブースでインドのまずいタバコを吸いながら心を落ち着ける。
狭いブースの中には中国人たちがタバコを吸っている。
中国語で喋っているが、もちろんまったくわからない。
中国は世界でもトップレベルに英語が通じない国と聞いている。
そしてハンに聞いたところ、中国には観光地にあるような小さな両替屋さんがなく、銀行でしか外貨の換金かできないという。
日本もそうだ。
換金屋さんなんてない。
今まで訪れてきた国々が外国からの観光客相手のビジネスに力を入れていただけで、中国や日本みたいに自国の国内だけで観光も成り立てるような国はよほど珍しい。
きっと様々なシステムが変わるだろう。
どうなってしまうだろう。
日付が変わって夜中の1時前。
飛行機に乗り込んでシートベルトをしめる。
さぁ、ついに中国だ。
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