4月23日 水曜日
【オーストラリア】 ヌーサ ~ ムールーラバ
「………ヘイ………ヘイ………エクスキューズミー。」
「…………はいはいはい!!」
声がして飛び起きると、蚊帳の外に人が立っていた。
チャックを開けて顔を出すと、2人のおじさん。
おそろいの服を着ている。
お!!アベックファッションのゲイでございますか!!
うん、ただのセキュリティのおじさん。
「ここで寝たらいけないよ。」
「分かりました、2秒で風のごとく消えます。」
「罰金550ドルだから、キャンプしたら。」
ぼひゅ!!!
「で、で、でもここ、他の公園みたいにキャンプ禁止の看板とかなかったから………あ、ちょっとウンコ漏れちゃった。」
「公共の場所ではどこもダメだよ。はいこれ、宿泊施設の名簿。」
わざわざヌーサの安いホテルや無料のキャンプサイトの住所が書かれた紙を持ってきてくれていたおじさんたち。
「こことか5ドルだから安いだろ。じゃあ公園で寝たらダメだからね。」
そう言って笑顔で去っていった。
あー………罰金550ドルとかウンコどうにかなるかと思ったわ………
ていうかこのヌーサに5ドルの宿泊施設があることにビビる。
なんだよなんだよ、そんな安いとこがあるなら野宿なんかしてる場合じゃねぇよ!!
たったの5ドルで泊まれるなら出発しようと思っていたヌーサ滞在を延ばしてもいいな。
オーストラリアもやればできるやん!!
そして紙に書いてあったバッグパッカー宿にやってきた。
「1人宿泊お願いします。いやー、ここマジで安いですね。僕実はカンガルーのことがすごく好きな………」
「OK~♫27ドルね~。」
「コアラもいいですけどやっぱりカンガルーとかマジでヤバイっていうか今なんてぬかしました?」
「27ドルよ~。5ドル?あー、それはマイカーで寝るなら5ドルってことよ~。5ドルで泊まれるわけねぇだろ早漏の分際でオーストラリアなめんな。」
ヌーサ出発決定。
ムカついたのでショッピングモールに行ってヤケ買い。
ボロボロになってたお風呂セットのポーチと小物入れポーチを新調。
そして昨日の事件で南米のホームレスも舌を巻くようなズタボロ具合になっていたイグジトのキャリーバッグをゴミ箱にダンクシュート。
この旅5代目のキャリーバッグ、見参。
嘘………何このカッコ良さ………
イグジトの骨組みとタイヤは残して合体させるという天才っぷり。
タイヤはまだ生きている。
イグジトバッグには粉々になるまで働いてもらおう。
よし、バッグも新しくなったことだし次の町に行くぞ。
場所はどこでもいいけど、ここから少し南にサンシャインコーストという町がある。
どんなところかわからないけど、名前からしてきっと素敵なところだろう。
とりあえずそこを目指そう。
週末にあんなさんがヌーサに来るという話だったんだけど、何度かメールのやりとりをするうちに、あんなさんが月曜日にブリスベンから飛行機に乗るということがわかった。
俺も来週にゴールドコーストから飛行機に乗る。
それならばステイ先により近いブリスベンでお会いしましょうということになった。
しかもブリスベンにはあんなさんがお世話になっている日本人の方がいらっしゃるようで、その方が俺のブログを読んで下さっているらしくウチに泊まりに来ませんか?とお誘いもいただいている。
日本人の女性でオーストラリアの男性と結婚してこちらで暮らしているA子さんという方で、この日曜日にあんなさんも一緒にA子さんのお宅にお泊りさせていただくことになった。
3日ほどサンシャインコーストで稼ぎ、土曜日にブリスベンでA子さんのお宅へ。
そして日曜日はあんなさんとチュー。まさに完璧すぎる流れ。
オラアアアアアア!!!!!!
ヒッチハイクする親指にも気合いが入るううううううううう!!!!!!!
コンドーム盗まれたけどおおおあおおおおおお!!!!!!
うん、車止まらない。
全然止まらない。
あ、あれおかしいな…………
オーストラリアではカンガルーもヒッチハイクしているって話だったのにどうしてこんなに止まらないんだ?
ここはヌーサ。
お金持ちたちの高級リゾート地。
走っている車はレクサスとかフェラーリとかピカピカの高級車ばかり。
そうですか。
そんな高級車には汚いバッグパッカーは乗せられないとおっしゃる。
た、確かに気が引けてベンツには親指立てられない(´Д` )
1時間が経過して雨まで降ってきやがった。
近くのバス停に逃げ込む。
こりゃもうバスで行っちまおうかなぁ………
でもさっき値段聞いたらたった30分くらいの距離なのに11ドルもしやがんだよなぁ………
いや、諦めるな。
きっと何かいいことが待っている。
バス停の外に出て小雨の中で親指を立てた。
ゲット。
「ワオ!!私さっきもヒッチハイカーを乗せたのよ!!今日はギブンダイね!!」
めちゃハイテンションなおばちゃんの名前はアンジー。
行くわよー!!とノリノリで俺のバッグをトランクにぶち込んでくれ、サンシャインコーストへと向かった。
運転しながら、サンシャインコースト~♫サンシャイン~♫フォウ!!とゴキゲンで歌っている陽気なアンジーおばちゃん。
「サンシャインコーストってこの辺り全部サンシャインコーストなのよ。どこに行きたいの?」
「歌をうたっているのでバスキングができる場所に行きたいです。」
「イヤッホウ!!バスキングしてるのね!!エクセレントだわ!!だったらムールーラバね。小さな町なんだけどヌーサみたいにカフェやレストランがズラリと並んだ場所があるからそこが完璧よ!!」
「すごい!!アンジーおばちゃん何でも知ってますね!!」
「ブヘヘヘヘ~、任せときんしゃい。」
そんな楽しいアンジーおばちゃんとドライブ。
かつて世界中を旅していたらしく、若いころはパーティー好きで毎晩踊りまくっていたんだそう。
サーファーズパラダイスにいるようなイケイケの姉ちゃんだったんだろうな。
「アンジーおばちゃん、カンガルー好きですか?」
「モチのロンよ~、私歌が好きでねー、でも上手じゃないの。家で歌っていたらいつも庭でカンガルーたちが驚いた顔しながら私のこと見てくるのよ。だから今歌のレッスン受けてるの。カンガル~♫カンガルウウウウ~♫」
俺がまだカンガルーを見たことないんですと言うと、そんなんそこら中にいるわよ!とわざわざ山の住宅地の方に入ってくれ、芝生の綺麗なエリアをゆっくりと走ってくれるアンジーおばちゃん。
いや、そんな簡単に見つかるものなの………?
その時、アンジーおばちゃんが向こうの方を指差した。
目を凝らすと、芝生の上の木陰で何やら見覚えのある姿。
やべぇ、マジのカンガルーやし。
やっべぇ!!!本当のカンガルーだ!!
「そろーっと近づいてね。でもあんまり近づいたら逃げるからね。」
俺を下ろしてくれるアンジー。
そろりそろりと近づいていき、肉眼ではっきり見えるところまで来た。
あああああああ………カンガルーだよ…………
じゅんちゃん、俺カンガルー見てるよ………
お腹にポケットがついていて、その中に子供を隠しているというあのみんなの人気者カンガルーだよ…………
じゅんちゃんのお腹でも隠せるかな、肉で…………
もう少し近づいてみようとしたらピョンピョンジャンプしながら林の方に逃げて行ったカンガルーたち。
ウケる(´Д` )
マジでそうやって進むんだね(´Д` )
世の中いろんな生き物がいるなぁ。
コアラとか灰色で丸くて変な形だし。
ぬいぐるみでしかないよな。
ていうかコアラまだ見てねぇ!!
ちなみにヌーサにコアラを抱っこ出来る動物園がありますが、入場に前日予約が必要な上にチケットが70ドルです。コアラなに食って生きてんだこの野郎。
「ほら~、海が見えてきたわよー!!サンシャインコーストの海は最高よ。ここには全てが揃ってるの!!」
丘を下っていく坂道の向こうに青く輝く紺碧の水平線が見えてきた。
緑豊かな住宅地の眼下に広がるその海のきらめきに、昨日までの沈んでいた気持ちが解放されるようだ。
「ここからワイルズが見えるのよ。」
「ワイルズ?ウルフ?狼がいるんですか?」
「ノーノー、ワイルズ。ワイルズよ。背中から水を吹き上げる。」
あー、鯨か。
オーストラリアの発音難しいなぁ。
……ていうか鯨!?
「そうよ、大きな鯨がすぐビーチの近くを泳ぐの。砂浜からもよく見えるわ。彼らは6月にケアンズの方にのぼっていくの。水が冷たいからね。そして10月を過ぎた頃にまた暖かい水を求めて戻ってくるのよ。ベイビーを連れてね!!」
本当にビーチからすぐそこでいくつもの潮を吹き上げたり、ザバーンとジャンプする姿も見ることができるんだそう。
たくさんの動物が住むこの南半球の大国、オーストラリア。
大自然と先進国の文明がこんなにアンバランスに入り混じった光景を目の当たりにすると、人間が開発している地域なんでこの地球のほんのごく一部なんだと感じずにはいられない。
人間は地球を全て支配しているようなイメージを持ってしまいがちだけど、まだまだ俺たちの力なんて微弱なもんだ。
海岸線まで降りてくると、そこには美しいビーチ沿いに高級なアパートメントが立ち並ぶ小ぢんまりとしたリゾートエリアがあった。
ストレートの一本道にカフェやレストラン、ブティックが軒を連ね、目の前にはプライベートな大きさの海水浴場が伸び、とても落ち着いた雰囲気が漂っている。
水族館があったり、RVパークがあったり、有名ではないけれど近隣の人たちが休日にのんびり過ごしに来るビーチのよう。
ゴールドコーストはバカ騒ぎするところ。
ヌーサは高級な保養地。
そしてここムールーラバはさらに落ち着いたファミリーリゾートといった感じだ。
「じゃあ私は今からスーパーでお買い物して帰るわ。お昼にお仕事して少しお金を稼ぎ、帰りにヒッチハイカーを乗せていいことをして、カンガルーを見て、家に帰って料理してリラックス。あ~パーフェクトな1日だわ!!」
そんなムールーラバのメインストリートで車を降りた。
やっぱり人との出会いは元気をもらえるな。
ヒッチハイクは楽しい。
アンジーおばちゃんありがとうございました!!
野宿場所を探すのが面倒なので町の中のRVパークにテントサイトはないかたずねてみた。
が、テントなのに42ドルという謎すぎる値段なので今夜も頑張って人の目につかない場所を探すことに。
重たい荷物を抱えてビーチ沿いを歩いた。
ああ……綺麗だなぁ。
この東海岸のビーチは本当に楽園のような場所だ。
ヌーサで不動産屋さんの物件を見てみたところ、このオーストラリアでプール付きの一軒家とかが3千万円とかで購入できるみたいだった。
ラグジュアリーな高級マンションも3~4千万円といったところ。
もちろんもっともっとスーパー高いところは天井知らずであるけども、この世界中の人たちが憧れるオーストラリアの東海岸に3千万で別荘が持てるんだったら悪くない。
美しいビーチと輝く太陽、大自然、そしてiPhoneをテーブルに置いてトイレに行っても誰も手をつけないような治安の良さ。
これぞ楽園だなぁ。
でも宮崎なら3万円でアパート借りられるけどね!!街のど真ん中に!!駐車場付きで!!
チキン南蛮恋しいなぁと思いながら、カフェ通りの中のセブンイレブンでお湯をもらってカップラーメンを食べ、そのままそこでギターを取り出して歌ってみた。
夕暮れのビーチから人が戻ってきて、レストランへと繰り出す家族連れでささやかな賑わいを見せるカフェ街。
18時にもなるとブティックなどのお店は全て閉まり、とても静かな通りをのんびりと歩く人々。
ギターをかき鳴らさなくても、声を張り上げなくても、充分に響き渡る。
1番俺の歌が活きるシチュエーション。
人々は足を止め、周りのベンチにたくさんの人が座り、曲が終わるごとに拍手が起きる。
セブンイレブンのフレンドリーな店員さんも店から出てきて、ニコニコしながら歌を聴いてくれる。
この静かな通りに、とても穏やかな空間が出来上がった。
ああ………ここ完璧だな。
アンジーおばちゃん、ありがとう。
やっぱり動いてみたら何かが起こる。
動かないで文句ばっかり言ってるだけじゃ墓石だな。
水曜日ということで20時を過ぎると人通りも少なくなってきたのでこのへんでギターを置いた。
あがりは2時間で114ドル。
充実した疲れで後は寝床探しだ。
海沿いの遊歩道はおそらく野宿禁止なので、陸側に入って歩いていく。
運河が複雑に入り組んだ住宅地が広がり、大きな車道にはこの時間だというのに車はほとんど走っていない。
静寂の運河に浮かぶクルーザーやヨットの繋留ロープがギシギシ……と音を立てる。
肩に食い込む荷物が血管を狭め、ギターを持つ手の感覚がなくなっていく。
はぁはぁ……と吐息をつきながらいくつもの橋を越えて暗い方へと歩く。
きつい。
でも夜空には満点の星空。
この世界で動いているものが俺だけのような気分になる。
とても生きている気持ちがした。
パーフェクトな1日だ。
いつもランキング投票のクリックありがとうございます。
ここをクリックして、読み込みが終わったら投票完了みたいです。
ワンクリック詐欺ではありません。
↓
![にほんブログ村 旅行ブログ 世界一周へ]()
にほんブログ村
旅の動画や日本放浪のブログ、コンタクトはこちら。
↓
http://www.nexyzbb.ne.jp/~naokane/
【オーストラリア】 ヌーサ ~ ムールーラバ
「………ヘイ………ヘイ………エクスキューズミー。」
「…………はいはいはい!!」
声がして飛び起きると、蚊帳の外に人が立っていた。
チャックを開けて顔を出すと、2人のおじさん。
おそろいの服を着ている。
お!!アベックファッションのゲイでございますか!!
うん、ただのセキュリティのおじさん。
「ここで寝たらいけないよ。」
「分かりました、2秒で風のごとく消えます。」
「罰金550ドルだから、キャンプしたら。」
ぼひゅ!!!
「で、で、でもここ、他の公園みたいにキャンプ禁止の看板とかなかったから………あ、ちょっとウンコ漏れちゃった。」
「公共の場所ではどこもダメだよ。はいこれ、宿泊施設の名簿。」
わざわざヌーサの安いホテルや無料のキャンプサイトの住所が書かれた紙を持ってきてくれていたおじさんたち。
「こことか5ドルだから安いだろ。じゃあ公園で寝たらダメだからね。」
そう言って笑顔で去っていった。
あー………罰金550ドルとかウンコどうにかなるかと思ったわ………
ていうかこのヌーサに5ドルの宿泊施設があることにビビる。
なんだよなんだよ、そんな安いとこがあるなら野宿なんかしてる場合じゃねぇよ!!
たったの5ドルで泊まれるなら出発しようと思っていたヌーサ滞在を延ばしてもいいな。
オーストラリアもやればできるやん!!
そして紙に書いてあったバッグパッカー宿にやってきた。
「1人宿泊お願いします。いやー、ここマジで安いですね。僕実はカンガルーのことがすごく好きな………」
「OK~♫27ドルね~。」
「コアラもいいですけどやっぱりカンガルーとかマジでヤバイっていうか今なんてぬかしました?」
「27ドルよ~。5ドル?あー、それはマイカーで寝るなら5ドルってことよ~。5ドルで泊まれるわけねぇだろ早漏の分際でオーストラリアなめんな。」
ヌーサ出発決定。
ムカついたのでショッピングモールに行ってヤケ買い。
ボロボロになってたお風呂セットのポーチと小物入れポーチを新調。
そして昨日の事件で南米のホームレスも舌を巻くようなズタボロ具合になっていたイグジトのキャリーバッグをゴミ箱にダンクシュート。
この旅5代目のキャリーバッグ、見参。
嘘………何このカッコ良さ………
イグジトの骨組みとタイヤは残して合体させるという天才っぷり。
タイヤはまだ生きている。
イグジトバッグには粉々になるまで働いてもらおう。
よし、バッグも新しくなったことだし次の町に行くぞ。
場所はどこでもいいけど、ここから少し南にサンシャインコーストという町がある。
どんなところかわからないけど、名前からしてきっと素敵なところだろう。
とりあえずそこを目指そう。
週末にあんなさんがヌーサに来るという話だったんだけど、何度かメールのやりとりをするうちに、あんなさんが月曜日にブリスベンから飛行機に乗るということがわかった。
俺も来週にゴールドコーストから飛行機に乗る。
それならばステイ先により近いブリスベンでお会いしましょうということになった。
しかもブリスベンにはあんなさんがお世話になっている日本人の方がいらっしゃるようで、その方が俺のブログを読んで下さっているらしくウチに泊まりに来ませんか?とお誘いもいただいている。
日本人の女性でオーストラリアの男性と結婚してこちらで暮らしているA子さんという方で、この日曜日にあんなさんも一緒にA子さんのお宅にお泊りさせていただくことになった。
3日ほどサンシャインコーストで稼ぎ、土曜日にブリスベンでA子さんのお宅へ。
そして日曜日はあんなさんとチュー。まさに完璧すぎる流れ。
オラアアアアアア!!!!!!
ヒッチハイクする親指にも気合いが入るううううううううう!!!!!!!
コンドーム盗まれたけどおおおあおおおおおお!!!!!!
うん、車止まらない。
全然止まらない。
あ、あれおかしいな…………
オーストラリアではカンガルーもヒッチハイクしているって話だったのにどうしてこんなに止まらないんだ?
ここはヌーサ。
お金持ちたちの高級リゾート地。
走っている車はレクサスとかフェラーリとかピカピカの高級車ばかり。
そうですか。
そんな高級車には汚いバッグパッカーは乗せられないとおっしゃる。
た、確かに気が引けてベンツには親指立てられない(´Д` )
1時間が経過して雨まで降ってきやがった。
近くのバス停に逃げ込む。
こりゃもうバスで行っちまおうかなぁ………
でもさっき値段聞いたらたった30分くらいの距離なのに11ドルもしやがんだよなぁ………
いや、諦めるな。
きっと何かいいことが待っている。
バス停の外に出て小雨の中で親指を立てた。
ゲット。
「ワオ!!私さっきもヒッチハイカーを乗せたのよ!!今日はギブンダイね!!」
めちゃハイテンションなおばちゃんの名前はアンジー。
行くわよー!!とノリノリで俺のバッグをトランクにぶち込んでくれ、サンシャインコーストへと向かった。
運転しながら、サンシャインコースト~♫サンシャイン~♫フォウ!!とゴキゲンで歌っている陽気なアンジーおばちゃん。
「サンシャインコーストってこの辺り全部サンシャインコーストなのよ。どこに行きたいの?」
「歌をうたっているのでバスキングができる場所に行きたいです。」
「イヤッホウ!!バスキングしてるのね!!エクセレントだわ!!だったらムールーラバね。小さな町なんだけどヌーサみたいにカフェやレストランがズラリと並んだ場所があるからそこが完璧よ!!」
「すごい!!アンジーおばちゃん何でも知ってますね!!」
「ブヘヘヘヘ~、任せときんしゃい。」
そんな楽しいアンジーおばちゃんとドライブ。
かつて世界中を旅していたらしく、若いころはパーティー好きで毎晩踊りまくっていたんだそう。
サーファーズパラダイスにいるようなイケイケの姉ちゃんだったんだろうな。
「アンジーおばちゃん、カンガルー好きですか?」
「モチのロンよ~、私歌が好きでねー、でも上手じゃないの。家で歌っていたらいつも庭でカンガルーたちが驚いた顔しながら私のこと見てくるのよ。だから今歌のレッスン受けてるの。カンガル~♫カンガルウウウウ~♫」
俺がまだカンガルーを見たことないんですと言うと、そんなんそこら中にいるわよ!とわざわざ山の住宅地の方に入ってくれ、芝生の綺麗なエリアをゆっくりと走ってくれるアンジーおばちゃん。
いや、そんな簡単に見つかるものなの………?
その時、アンジーおばちゃんが向こうの方を指差した。
目を凝らすと、芝生の上の木陰で何やら見覚えのある姿。
やべぇ、マジのカンガルーやし。
やっべぇ!!!本当のカンガルーだ!!
「そろーっと近づいてね。でもあんまり近づいたら逃げるからね。」
俺を下ろしてくれるアンジー。
そろりそろりと近づいていき、肉眼ではっきり見えるところまで来た。
あああああああ………カンガルーだよ…………
じゅんちゃん、俺カンガルー見てるよ………
お腹にポケットがついていて、その中に子供を隠しているというあのみんなの人気者カンガルーだよ…………
じゅんちゃんのお腹でも隠せるかな、肉で…………
もう少し近づいてみようとしたらピョンピョンジャンプしながら林の方に逃げて行ったカンガルーたち。
ウケる(´Д` )
マジでそうやって進むんだね(´Д` )
世の中いろんな生き物がいるなぁ。
コアラとか灰色で丸くて変な形だし。
ぬいぐるみでしかないよな。
ていうかコアラまだ見てねぇ!!
ちなみにヌーサにコアラを抱っこ出来る動物園がありますが、入場に前日予約が必要な上にチケットが70ドルです。コアラなに食って生きてんだこの野郎。
「ほら~、海が見えてきたわよー!!サンシャインコーストの海は最高よ。ここには全てが揃ってるの!!」
丘を下っていく坂道の向こうに青く輝く紺碧の水平線が見えてきた。
緑豊かな住宅地の眼下に広がるその海のきらめきに、昨日までの沈んでいた気持ちが解放されるようだ。
「ここからワイルズが見えるのよ。」
「ワイルズ?ウルフ?狼がいるんですか?」
「ノーノー、ワイルズ。ワイルズよ。背中から水を吹き上げる。」
あー、鯨か。
オーストラリアの発音難しいなぁ。
……ていうか鯨!?
「そうよ、大きな鯨がすぐビーチの近くを泳ぐの。砂浜からもよく見えるわ。彼らは6月にケアンズの方にのぼっていくの。水が冷たいからね。そして10月を過ぎた頃にまた暖かい水を求めて戻ってくるのよ。ベイビーを連れてね!!」
本当にビーチからすぐそこでいくつもの潮を吹き上げたり、ザバーンとジャンプする姿も見ることができるんだそう。
たくさんの動物が住むこの南半球の大国、オーストラリア。
大自然と先進国の文明がこんなにアンバランスに入り混じった光景を目の当たりにすると、人間が開発している地域なんでこの地球のほんのごく一部なんだと感じずにはいられない。
人間は地球を全て支配しているようなイメージを持ってしまいがちだけど、まだまだ俺たちの力なんて微弱なもんだ。
海岸線まで降りてくると、そこには美しいビーチ沿いに高級なアパートメントが立ち並ぶ小ぢんまりとしたリゾートエリアがあった。
ストレートの一本道にカフェやレストラン、ブティックが軒を連ね、目の前にはプライベートな大きさの海水浴場が伸び、とても落ち着いた雰囲気が漂っている。
水族館があったり、RVパークがあったり、有名ではないけれど近隣の人たちが休日にのんびり過ごしに来るビーチのよう。
ゴールドコーストはバカ騒ぎするところ。
ヌーサは高級な保養地。
そしてここムールーラバはさらに落ち着いたファミリーリゾートといった感じだ。
「じゃあ私は今からスーパーでお買い物して帰るわ。お昼にお仕事して少しお金を稼ぎ、帰りにヒッチハイカーを乗せていいことをして、カンガルーを見て、家に帰って料理してリラックス。あ~パーフェクトな1日だわ!!」
そんなムールーラバのメインストリートで車を降りた。
やっぱり人との出会いは元気をもらえるな。
ヒッチハイクは楽しい。
アンジーおばちゃんありがとうございました!!
野宿場所を探すのが面倒なので町の中のRVパークにテントサイトはないかたずねてみた。
が、テントなのに42ドルという謎すぎる値段なので今夜も頑張って人の目につかない場所を探すことに。
重たい荷物を抱えてビーチ沿いを歩いた。
ああ……綺麗だなぁ。
この東海岸のビーチは本当に楽園のような場所だ。
ヌーサで不動産屋さんの物件を見てみたところ、このオーストラリアでプール付きの一軒家とかが3千万円とかで購入できるみたいだった。
ラグジュアリーな高級マンションも3~4千万円といったところ。
もちろんもっともっとスーパー高いところは天井知らずであるけども、この世界中の人たちが憧れるオーストラリアの東海岸に3千万で別荘が持てるんだったら悪くない。
美しいビーチと輝く太陽、大自然、そしてiPhoneをテーブルに置いてトイレに行っても誰も手をつけないような治安の良さ。
これぞ楽園だなぁ。
でも宮崎なら3万円でアパート借りられるけどね!!街のど真ん中に!!駐車場付きで!!
チキン南蛮恋しいなぁと思いながら、カフェ通りの中のセブンイレブンでお湯をもらってカップラーメンを食べ、そのままそこでギターを取り出して歌ってみた。
夕暮れのビーチから人が戻ってきて、レストランへと繰り出す家族連れでささやかな賑わいを見せるカフェ街。
18時にもなるとブティックなどのお店は全て閉まり、とても静かな通りをのんびりと歩く人々。
ギターをかき鳴らさなくても、声を張り上げなくても、充分に響き渡る。
1番俺の歌が活きるシチュエーション。
人々は足を止め、周りのベンチにたくさんの人が座り、曲が終わるごとに拍手が起きる。
セブンイレブンのフレンドリーな店員さんも店から出てきて、ニコニコしながら歌を聴いてくれる。
この静かな通りに、とても穏やかな空間が出来上がった。
ああ………ここ完璧だな。
アンジーおばちゃん、ありがとう。
やっぱり動いてみたら何かが起こる。
動かないで文句ばっかり言ってるだけじゃ墓石だな。
水曜日ということで20時を過ぎると人通りも少なくなってきたのでこのへんでギターを置いた。
あがりは2時間で114ドル。
充実した疲れで後は寝床探しだ。
海沿いの遊歩道はおそらく野宿禁止なので、陸側に入って歩いていく。
運河が複雑に入り組んだ住宅地が広がり、大きな車道にはこの時間だというのに車はほとんど走っていない。
静寂の運河に浮かぶクルーザーやヨットの繋留ロープがギシギシ……と音を立てる。
肩に食い込む荷物が血管を狭め、ギターを持つ手の感覚がなくなっていく。
はぁはぁ……と吐息をつきながらいくつもの橋を越えて暗い方へと歩く。
きつい。
でも夜空には満点の星空。
この世界で動いているものが俺だけのような気分になる。
とても生きている気持ちがした。
パーフェクトな1日だ。
いつもランキング投票のクリックありがとうございます。
ここをクリックして、読み込みが終わったら投票完了みたいです。
ワンクリック詐欺ではありません。
↓

にほんブログ村
旅の動画や日本放浪のブログ、コンタクトはこちら。
↓
http://www.nexyzbb.ne.jp/~naokane/